カテゴリー「政治3(世界3-ラテンアメリカ)」の27件の記事

2009年3月 1日 (日)

ベネズエラ、大統領などの三選禁止を撤廃(2009.02.15)

 去る15日、ベネズエラで、大統領などの再選制限規定を撤廃する憲法修正が、概ね55%(約600万票)対45%(約504万票)(開票率94%)で承認されました。ベネズエラでの、アメリカ言いなりを拒否した国民本位の国づくりという社会変革過程の1歩前進として、この結果を一先ず喜びたいと思います。

 反対派は、この憲法修正を、独裁色の強化として反対したようですが、首相にも国会議員にも、また県知事や市長にも再選制限などない日本が独裁国家などと評価されることがないことからして、これはそもそも成り立たない批判でした。

 また、ラテンアメリカでは、大統領や国会議員が汚職にまみれ、権力を乱用する例が多く、これを防ぐという理由から、ほとんどの国で再選回数の制限が設けられて来たそうですが、「反対派の中核をなす学生」(毎日2月13日付)が「07年5月、政府がチャベス大統領を批判した民間テレビ局の放送免許更新を認めなかったこと」に反対しているようでは(同上)、これも説得力がありません。

 なぜなら、当該テレビ局は、2002年4月にチャベス反対派が、軍事力によって独裁政権を樹立すべくクーデターを起こしたとき、虚偽の報道を繰り返し流すことによってクーデター遂行に深く主体的に関与した政治勢力であって、単なる言論機関ではないからです。このような政治勢力が何らかの実効性ある規制を受けるのは、民主主義と法の支配を維持していく上で当然なされるべきことで、それはテロリストを始めとする犯罪者が法的に規制を受けるのと同様のことです。反対派が独裁反対を言うなら、このクーデターに確固として反対すべく、この放送免許の非更新を民主主義のためには当然のこととして支持しなければなりません。

 ただ、ベネズエラでは、国民の投票(意思)によって政治的選択を決して行くというやり方が定着してきていることも、今回の国民投票は示してくれたようです。CNN電子版2月16日付に依れば、

結果判明に先立ち、反政府系紙ウニベルサルは、反チャベス派の学生運動指導者が、国民投票の結果を尊重する意向を表明したと伝えた。指導者は『われわれは民主主義と憲法を信じる。いかなる結果でもそれを認める』と述べた

そうですし、AFP電子版2月17日付に依れば、

米国務省のノエル・クレイ(Noel Clay)報道官は17日、ベネズエラで15日に行われた憲法修正案の承認を求める国民投票が民主的に実施されたことを歓迎し、ベネズエラに民主主義と寛容の精神を支持するよう求めた

といった点にもそれは現れていると思います。

 ベネズエラにはまだまだ課題が山積みのようです。日経2月17日付に依れば、

・・・〇八年のインフレ率は前年比三〇・九%増と六年ぶりの高水準。スーパーの店頭では砂糖など価格統制対象品が姿を消すことがある。採算割れを嫌うメーカーが生産を手控えるためだ。

 頼みの綱だった石油を巡る環境も一変した。政府の歳入のうち約半分を石油輸出が占めるが、ベネズエラ原油は現在一バレル三五ドル程度で推移。政府は同六〇ドルを前提に〇八年予算を作成しており、歳入不足を補う具体策は見えない。

 もっと深刻なのは生産量の低下だ。英BPによるとベネズエラの原油生産量は一九九八年から〇七年の間に二五%減った。国営石油会社PDVSAが貧困対策などへの拠出を政府に強いられ、既存油田の生産量維持に必要な投資を続けてこなかったからだ。(カラカス=檀上誠)

という状況のようですから。

 「国民の投票(意思)による選択」という手段で、「アメリカ言いなりを拒否した国民本位の国づくり」という社会変革を一層進めていって欲しいと思います。

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 関連するしんぶん赤旗の記事/論説を引用しておきます。

2009年2月17日(火)「しんぶん赤旗」

大統領3選制限撤廃
国民投票 社会変革継続を選択
ベネズエラ

 【カラカス=島田峰隆】南米ベネズエラで十五日、大統領や州知事、国会議員などの三選制限を撤廃する憲法修正の是非を問う国民投票が投開票されました。全国選挙評議会が同日夜、開票率94%の段階で発表したところでは、賛成54・36%(約六百万票)、反対45・63%(約五百四万票)で、修正案は賛成多数で承認されました。棄権は約33%でした。

 今回の国民投票は、チャベス大統領の就任からちょうど十周年の時期に行われました。国民の多くは、新自由主義と対米従属から決別し、貧困層を支援する同政権の社会変革を継続・発展させる方向を選択したといえます。

 チャベス大統領は十五日夜、カラカス市内の大統領府で、「明確な勝利だ。今日われわれは未来へ扉を開いた」と勝利宣言しました。

 同大統領は「尊厳のなかった過去へは後戻りしない」と変革の継続を約束。二〇一二年に予定される次期大統領選への立候補に意欲を示しました。さらに「人間の尊厳への道は社会主義だ。真の社会主義への歩みを強めるよう呼びかける」と語りました。

 与党、統一社会主義党の党員や支持者らは、全国で旗やプラカードを持って通りに繰り出し、勝利を祝いました。

 反対派の学生運動指導者は、「結果を受け入れる」と表明しました。

 チャベス政権は、豊富な石油資源の収入を使い、無償の教育や医療、職業訓練、市場価格より食料品を安く売る店の設置など社会計画を進め、貧困を大きく減らしました。チャベス大統領は、「変革の深化にはさらに十年は必要」と述べ、憲法修正へ支持を訴えました。

 二〇〇七年十二月には、憲法に社会主義の方向性を盛り込み、大統領の三選制限を撤廃する改正の是非を問う国民投票が行われました。この時は反対がわずかに上回り、修正案は承認されませんでした。

2009年2月18日(水)「しんぶん赤旗」

ベネズエラ大統領3選禁止撤廃
国民投票が示したもの

 十五日実施のベネズエラの国民投票で、米国言いなりを拒否し国民本位の国づくりを進めるチャベス政権が提起した憲法修正案が、55%の支持で承認されました。これによって、大統領、国会議員、自治体首長などの公職について、これまであった再選回数の制限(大統領の場合は一回まで)が廃止されます。

《制限なしでも「選出は投票によって」》

 国民投票の設問は、現職にあるものが再選に向け候補者となることができるという「国民の政治的権利を拡大した」修正案を承認しますか、というものでした。再選される職務も「憲法に定められた期間」(任期)に従い、「選出は国民の投票によってのみ行われる」との補足説明がつけられています。

 今回承認されたのは、現職の大統領、議員らの立候補回数の制限の撤廃であり、任期満了になれば新たな選挙で国民の審判を受ける仕組みは当然残されています。

 「立候補制限廃止=終身制・独裁」という批判がありますが、与党側はこうした仕組みを説明しつつ、「憲法改正が大統領の自動的な再選を保障するものではない」と反論してきました。

 チャベス大統領は現憲法下で実施された二回の大統領選挙(二〇〇〇年、〇六年)で当選し、任期六年ですから、次回二〇一二年の選挙には立候補できない状況にありました。与党側は憲法修正の意味を、「国民の選択肢を広げるもの」と説明。宣伝物でも、同大統領の立候補を可能にすれば「よりよい社会実現へ必要な変革を継続できる」と解明していました。

 一方、反対票も45%に達し、一定の支持を得ました。

 ラテンアメリカでは、大統領や国会議員が汚職にまみれ、権力を乱用する例が多く、これを防ぐという理由から、ほとんどの国で再選回数の制限が設けられてきました。

 しかし、ベネズエラの場合、米国やこれに支援された野党勢力の抵抗にあいながら、国の仕組みを大きく変える事業が進められています。

 中小企業経営者を中心とするベネズエラ企業家連合のウスカテギ会長は、中小・零細企業を重視する方針をとっている現政権を評価し、「経済の自主的な成長を促す(革命の)プロセスの継続を保証するために」憲法修正が必要だと主張していました。

《投票で国民の意思を確認して進む改革》

 重要なのは、今回のように与野党が厳しく対立する問題でも、国民の意見を集約する国民投票というやり方で決着がつけられたことです。

 与党の憲法修正運動の責任者は、チャベス政権になってからの各種の選挙や国民投票は「今回が十五回目」であり、「国民はわが国の民主主義の参加型の性格を理解している」と語り、投票に参加した人々に「祝意」を送りました。

 中南米十八力国を対象にした世論調査によると、政治の変革に影響を与える効果的な手段として「投票」と回答した割合はベネズエラが最も高く、80%に達しています(ラティノバロメトロ08)。

 今回の結果は、投票によって国民の意思を確認しながら進むベネズエラの改革の姿を改めて鮮明にしたともいえるでしょう。(党国際局・菅原啓)

2009年2月20日 (金)

ベネズエラ地方選(2008.11.23)

 昨年11月23日に投開票されたベネズエラ地方選に関するしんぶん赤旗の記事です。今回の大統領3選禁止規定の撤廃に関わって改めて読んだので、クリップしておきます。

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2008年11月25日(火)「しんぶん赤旗」

ベネズエラ地方選
与党、17州で勝利

 ベネズエラの一斉地方選挙は二十三日、二十二の州知事選などの投開票が行われ、チャベス大統領の与党、統一社会主義党(PSUV)が第一回発表の二十州の知事選のうち十七州で勝利し、現状を維持しました。

 国営ラジオが伝えた同日夜の選挙評議会による第一回の結果発表によると、PSUVは、人口の多いミランダ州の知事や首都圏市長を失ったものの、新たに四州で知事を野党から奪回しました。前回二〇〇四年の一斉地方選挙では、全国二十四州のうち二十二州で与党が勝利。その後五州の知事が革命に反旗を翻し、選挙前、与党系の知事は十七人でした。

 今度の一斉地方選挙は、一九九八年のチャベス大統領の初当選以来、十四回目の全国規模の国民的審判です。革命推進派の与党が十二回連続して勝利した後、昨年の憲法改定をめぐる国民投票では、小差ながら与党が初の敗北を喫しました。

 今回はその後、初めての全国選挙で、与党の社会改革に反対する野党が全面参加。革命与党のベネズエラ共産党(PCV)や「みんなのための祖国」も今回初めて、いくつかの州で独自候補をたて、社会改革や地方自治の進め方をめぐって活発な政党間論戦が行われました。

 この結果、投票率は65・45%と、前回の45%を大きく上回り、地方選挙としてはかつてない高さになりました。

 第一回の結果発表をうけて、チャベス大統領は「人民の選択による民主主義の道が確認された。大成功であり、ベネズエラの勝利だ」と述べました。

2008年12月1日(月)「しんぶん赤旗」

ベネズエラ地方選 与党勝利
政府の社会変革に期待
課題は中産階級の説得

 【メキシコ市=島田峰隆】十一月二十三日に行われたベネズエラ地方選挙で、チャベス大統領率いる与党、統一社会主義党(PSUV)は、知事選で二十二州のうち十七州で勝利、市長選では八割の自治体を押さえました。全体として、政府が進める社会変革に多くの国民が期待を寄せていることを示しました。

 チャベス大統領の最初の当選からちょうど十年目に行われた今回の選挙は、「社会変革の行方を国民に問う機会」(同大統領)として注目されました。

 米政府や欧米メディアは、与党が五つの州と首都圏市長選で敗れたことをとらえて、「国民の反発」(ライス米国務長官)という見方を示しています。

市長選は8割

 しかし知事選得票数では、与党は約五百五十万票を獲得したのに対し、野党は約四百三十万票です。昨年十二月の新憲法案をめぐる国民投票と比べると、与党は約百二十万票の増、野党は約二十万票の減でした。

 市長選では、与党は全体の八割にあたる二百六十五自治体で勝利。前回比十以上の増で、州知事選で敗れた五州でも市長選では圧倒的な勝利を収めました。

 チャベス大統領は「国民が社会変革を進める意思を示した」と評価しました。一方で五州での敗北に触れて、「自己批判し、間違いを認める必要がある」とも強調しました。

 首都カラカス市内で活動するPSUVの幹部、カルロス・デルベッキオ氏は、本紙の電話取材に対し、「首都での最大の敗因は、中産階級への説得が不十分で、支持を固め切れなかったことだ」と語りました。

 敗北した五州は、石油や観光の資源に恵まれた比較的豊かな地域。デルベッキオ氏によると、野党側はこうした地域の中産階級を標的に、「政府は社会主義国家をつくり、車や家を取り上げる」と不安をあおりました。

 同氏は、「野党の宣伝は、ある程度の財産を持った層に恐怖感を与えることに成功した。中産階級の理解をいかに得るかが今後の課題だ」といいます。チャベス大統領も今年一月、変革の深化には「中産階級との同盟」が不可欠だと指摘していました。

模範的な選挙

 今回は、チャベス大統領の初当選以来、十三回目の国民的審判でした。投票率が65%というかつてない高さに達し、与野党とも結果を直ちに受け入れたことは、選挙を通じた変革が定着し始めたことを示しています。

 米州機構(OAS)のインスルサ事務総長は、「平和的かつ模範となる選挙だった」と高く評価しました。

2008年6月16日 (月)

南米諸国連合(UNASUR)設立条約調印、リスボン条約否認

 歴史と経緯、また局面も異なる、中南米カリブ海諸国とヨーロッパであり、また、片や条約の調印、片や条約の否認ですが、諸国民の求めているものには共通性が窺えます。

 南米諸国連合(UNASUR)設立条約は、「統合は多国間主義の強化に向けた決定的な一歩」だと強調し、主権の平等に基づいた多極化世界、核兵器や大量破壊兵器のない世界を目標として明記すると共に、「社会的、経済的な不平等の根絶」も掲げ、貧困や社会的排除とたたかう決意を強調しているそうです(外務省の解説はここ)。

 他方、リスボン条約は、欧州委員の削減などの機構の効率化や迅速な決定が可能な多数決制を採用し、常任議長として任期2年半の大統領を選出、外相に相当する外交安保上級代表がEUとしての外交を統括するなどEUの機能を強化するものであり、反面、ストなどの社会権を明記した「欧州基本権憲章」は条約本文には盛り込まれず、付属条項で触れられるにとどまりました。

 リスボン条約否認を受けて、フランスのジュイエ欧州問題担当閣外大臣は「欧州の戦略と市民の懸念との間には、かなりの温度差があることを示した」と述べ、欧州議会内の社会党グループ「欧州社会党」のマルチン・シュルツ代表(ドイツ)は、「われわれが望んでいる欧州とは・・・より社会的な欧州だ」と述べたそうです。

 ここに窺える共通性に注目しておきたいと思います。それは、後期高齢者医療制度の問題、派遣労働の問題、憲法9条の問題、米軍再編の問題などで揺れる日本の政治にも見られる共通性だと思います。新自由主義と総括される今の資本主義社会の到達点のままでは社会が立ちゆかなくなっていることを示しており、少なくとも資本主義のバージョン・アップが求められているのだと思います。

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 関連するしんぶん赤旗の記事を引用しておきます。

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2008年1月 7日 (月)

ベネズエラ、「21世紀の社会主義」建設を進めるために、中産階級との同盟を追求

 5日の記事でロイターや共同発の小さな新聞記事を引用しておきましたが、今朝もう少し詳しく報道されていました。

 チャベス大統領は、彼の言う「21世紀の社会主義」を実現するために、従来にも増してより幅広い国民と共に社会変革を進める方針を固め、具体化しようとしているようです。科学的社会主義の理論で言うならば、「多数者革命」の理論なのでしょう。2002年のクーデター参加者にも恩赦を出したとは驚きです。また、日本にとっても単なる他所の国の出来事というだけではないと思います。

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2008年1月7日(月)「しんぶん赤旗」

ベネズエラ
中産階級との同盟追求
大統領が内閣改造で強調

 ベネズエラのチャベス大統領は五日までに、ロドリゲス副大統領など十二閣僚を入れ替える大幅な内閣改造人事を発表しました。昨年十二月の憲法改定国民投票での敗北を受けたもので、大統領は「二十一世紀の社会主義」建設を進める上で、中産階級との同盟が重要だと強調しました。

 新たな副大統領にはカリサレス住宅相が就任。このほか財務相にはイセア副大臣が昇格します。離任するロドリゲス副大統領は、左翼政党を統合する社会主義統一党(PSUV)の活動に専念するとされます。

 大統領はこれに先立って三日、国営テレビに電話出演して内閣改造の考え方を説明。「われわれは過激主義者ではないし、そうなってはならない。中産階級との同盟を追求しなければならない」と強調しました。

 また、私有財産をなくすような計画はないと改めて強調するとともに、これまで政府が進めてきた「貧困層向けの施策から疎外されている中産階級や他の社会セクターに手を差し伸べることが重要だ」と言明。イデオロギーをふりまわすのでなく、「犯罪やごみ収集など、草の根の支持者に直接影響を及ぼす問題の解決に取り組む」と約束しました。

 大統領は昨年十二月三十一日、二〇〇二年のクーデターに参加した関係者に恩赦を与える決定を発表しています。

2008年1月 5日 (土)

ベネズエラ・チャベス大統領「中産階級との同盟を追求しなければならない」

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2008年1月5日(土)「しんぶん赤旗」

ベネズエラ大統領
大幅な内閣改造発表

 【カラカス=ロイター】ベネズエラのチャベス大統領は3日、ロドリゲス副大統領に代わってカリザレス住宅相をあてるなど、大幅な内閣改造の意向を明らかにしました。大統領は過激主義を否定し、「中産階級との同盟を追求しなければならない」とのべました。

ベネズエラで副大統領含め内閣改造
(日経電子版 2008.01.04)

 ベネズエラのチャベス大統領は3日、ロドリゲス副大統領を含む閣僚のほぼ半数を入れ替える内閣改造を行うことを明らかにした。昨年12月に行われた憲法改正の是非を問う国民投票で、大統領提案の改正案が否決されたことの責任をとらせたとみられる。

 ロイター通信によると、新たな副大統領には現住宅相のカリサレス氏が指名された。(サンパウロ=共同)(20:01)

ベネズエラがデノミ実施、通貨1000分の1に
(日経電子版 2008.01.04)

 ベネズエラ政府は1日、通貨ボリバルの単位を1000分の1に切り下げ、通貨の名称も「ボリバル・フエルテ」(強いボリバル)と変更するデノミネーション(通貨呼称単位の変更)を実施した。

 同国の昨年のインフレ率は約20%と中南米で最高水準で、ボリバルの購買力が急速に落ち込んでいる。ベネズエラは固定相場制を採用しており、デノミ後の相場は1ドル=2.15ボリバル・フエルテとなる。(サンパウロ=共同)(04日 20:01)

2007年12月18日 (火)

ベネズエラ憲法改正国民投票、その後―日本にも求められる「国民の意思に基づく政治」(追加)

 12月2日に行われたベネズエラの憲法改正国民投票は、投票率が約56%で結果は以下のようなものでした。

2007年12月11日(火)「しんぶん赤旗」

憲法改正国民投票の最終結果

 ベネズエラの全国選挙評議会が七日に発表した国民投票の最終結果は、以下の通りです。投票は二つの部分に分けて行われました。

【ブロックA】賛成49・34% 反対50・65%

【ブロックB】賛成48・99% 反対51・01%

 2006年12月3日の大統領選挙では、投票率が74・97%、得票(率)がウーゴ・チャベス7,161,637票(62・89%)、マヌエル・ロサレス4,196,329票(38・85%)ですから(データはここここ)、大雑把に言って、大統領選で700万対400万だったものが、今回の国民投票では400万対400万になったことになります。

 この結果とその後のベネズエラ政府の対応によってベネズエラ政治にもたらされた最大の成果は、チャベス大統領の進めてきた「国民の意思に基づく政治」がさらに大きく前進したことだと思います。

 一方で、チャベス大統領が小差の敗北を受け入れ、さらには「反省と自己批判をはじめ」、他方、チャベス反対派からも、投票結果は「排除や特権のない民主的変革の始まりを特徴付ける」と指摘されたり、「すべてのセクター(部門)がどういう国をめざすかを一緒に議論する機会だ」、「政府と話し合い、社会と国民全体に役立つ国のモデルづくりを進める用意がある」という声が上がったりしているからです。

 日本の政治が、あくまでも「国民の意思」に逆らい、「アメリカの意思」や「財界・大企業の意思」に従おうとしているのとは180度異なります。

 この点において、日本の政治もベネズエラの政治を模範として欲しいものだと思います。

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(追加)

 それにしても、憲法改正案について勝手な推測により素朴な感想を述べるなら、この改正案の眼目は下に引用したリストの6番にある「地区住民評議会を中心とする人民権力の創設」にあったのではないかと思えます。

 ところが、実際には、1番の「社会主義」という用語や2番の「大統領の再選規制の撤廃」に議論が集中し、肝心の「人民権力の創設」はほとんど理解されなかったのではないかと思います。

 「人民権力の創設」に眼目があったと思うのは、もともと社会の変革は少数の政治家によって成し遂げられるものではなく、大多数の国民が現実に変革に参加しない限り成し遂げられないものですし、このことをチャベス氏は理解しているのではないかと推測されるからです。

 変革をサボタージュし汚職する、国・地方・企業の役人や幹部たちの力を削り、国民自身に力を与えて、国民自身の手で国民の利益になる変革を推進していく、これがチャベス氏が持つ変革のイメージであり「社会主義」のイメージだったのではないかと思います。しかも、これと結びつく形で、リストの2番、3版、4番にある大統領の地位・権限の強化があったのではないか。

 しかし、この改正案は国民に受け入れられませんでした。今後は、下に引用するしんぶん赤旗の連載記事にある集団指導体制の確立、また統一社会主義党の発展という形で、この変革のイメージが追求されていくのではないかと思います。

2007年12月2日(日)「しんぶん赤旗」

憲法改正案 目的と内容
(引用に当たって連番を振りました-saru注)

 ベネズエラ憲法改正案の目的と主な内容は以下の通りです。

【目的】

1、資源の貧困層向け再配分を強める。

2、住民の直接的な発言力を保障するため政治権力を分散化させる。

3、発展と民主主義のため、平等で新しいモデルの法的基盤を整備。

【主な内容】

1、ベネズエラの社会経済体制は社会主義、反帝国主義、人道主義を基本とする。

2、大統領任期を六年から七年に延長。連続再選は一度とする再選規制を廃止。

3、公職の罷免投票制度は維持。実施に必要な署名数を選挙人の10%から20%に引き上げる。

4、大統領が宣言する非常事態時に知る権利を制限。

5、選挙権を十八歳から十六歳に引き下げる。

6、地区住民評議会を中心とする人民権力を創設。地方自治体は問題解決のために国家資産を活用できる。

7、私有財産権は引き続き保障。ただし正当な理由が認められる場合は、適切な補償をしたうえで政府が接収できる。

8、社会計画や人道的開発の推進のため、中央銀行の自律性を制限し政府の管理下に置く。

9、社会的利益に反する大土地所有は禁止。天然資源は国家の所有とし、国営石油会社の民営化は、部分的であっても認めない。

10、一日の法定労働時間を八時間から六時間に短縮。

 ベネズエラの国民投票後の動きを伝えるしんぶん赤旗の記事を引用しておきます。

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2007年12月 5日 (水)

ベネズエラの憲法改正案否決に思うこと―付録

 今朝のしんぶん赤旗に収録されていた、憲法改正案否決を受けたチャベス大統領の演説をクリップしておきます。

 今回の事態を「成熟」の問題と捉え、変革の基礎は国民の意思にあることを確認した上で、「道徳的な勝利」を勝ち取っていくことを課題とし、具体的には「1999年の憲法が認めている施策の中で、政治的枠組みを築」くことを呼び掛けていることが重要だと思います。

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2007年12月5日(水)「しんぶん赤旗」

ベネズエラ
“もっと成熟が必要”
大統領 社会主義、今後も探求

 【カラカス=松島良尚】ベネズエラのチャベス大統領は三日の国営テレビの電話インタビューで、自身が提案した憲法改正案が前日の国民投票で否決されたことについて、「われわれは何も失っていない。責任の追及はしない。おそらく公然と社会主義プロジェクトを開始するほどわれわれは成熟していないということだ」と述べました。

 同時に、「もっと成熟し、自分たちの社会主義を建設し続けなければならない」と語り、今後も社会主義へのプロセスを探求していく姿勢を明確にしました。

 また、国民投票の結果を分析、教訓化する重要性も強調。反対派が昨年の大統領選で得た四百三十万の野党候補票を維持したのに対し、賛成派は当時のチャベス票より三百万票減らしたと指摘しました。大統領は、国民投票の結果判明後にアルゼンチン、エクアドル、キューバ、ニカラグアの各首脳から激励の電話を受けたことを明らかにしました。

チャベス大統領の国民向け演説(要旨)

 ベネズエラのチャベス大統領が三日、国民投票の結果を受けて行った国民向け演説の要旨は以下の通りです。

 私の提案に賛成票を投じた人々、反対票を投じた人々に、私は感謝するし、彼らを称賛したい。

 政治的に成熟しよう。われわれは民主主義のなかで生きているという民主主義的な確信を持って今後の過程に向き合おう。ベネズエラ国民は全面的な自由、憲法が保障する自由を享受している。

 私は、今回の提案のコンマ一つたりとも撤回しないということを知ってほしい。この提案は生き続けるし、死んではいない。

 (投票結果で)前進が止められたわけではまったくない。投票者の49%が社会主義の建設に賛成したという事実は、巨大な政治的飛躍だ。私を信じる人は自信を持ってほしい。私にとっては、まったく敗北ではない。「さしあたりの」敗北だ。

 一九九九年の憲法が認めている施策の中で、政治的枠組みを築きながらたたかいを続けよう。

 私は常に国民の声を聞いてきたし、ベネズエラ・ボリバル共和国の建設を続けるために、これからもすべての国民の考えに常に耳を傾け続けるだろう。

 この革命の提案は強化され続けるだろう。困難な時期、厳しい時期にも問題に取り組むことができる。別の機会には明らかな敗北を道徳的な勝利へと転換させたことがあるし、その道徳的な勝利は、後に政治的勝利になったのだ。

ベネズエラの憲法改正案否決に思うこと

 ベネズエラで、チャベス大統領提案の憲法改正案が小差で否決されました。2日付のしんぶん赤旗によれば、その改正案は以下のようなものです。

2007年12月2日(日)「しんぶん赤旗」

憲法改正案目的と内容
(引用に当たって連番を振りました-saru注)

 ベネズエラ憲法改正案の目的と主な内容は以下の通りです。

【目的】

1、資源の貧困層向け再配分を強める。

2、住民の直接的な発言力を保障するため政治権力を分散化させる。

3、発展と民主主義のため、平等で新しいモデルの法的基盤を整備。

【主な内容】

1、ベネズエラの社会経済体制は社会主義、反帝国主義、人道主義を基本とする。

2、大統領任期を六年から七年に延長。連続再選は一度とする再選規制を廃止。

3、公職の罷免投票制度は維持。実施に必要な署名数を選挙人の10%から20%に引き上げる。

4、大統領が宣言する非常事態時に知る権利を制限。

5、選挙権を十八歳から十六歳に引き下げる。

6、地区住民評議会を中心とする人民権力を創設。地方自治体は問題解決のために国家資産を活用できる。

7、私有財産権は引き続き保障。ただし正当な理由が認められる場合は、適切な補償をしたうえで政府が接収できる。

8、社会計画や人道的開発の推進のため、中央銀行の自律性を制限し政府の管理下に置く。

9、社会的利益に反する大土地所有は禁止。天然資源は国家の所有とし、国営石油会社の民営化は、部分的であっても認めない。

10、一日の法定労働時間を八時間から六時間に短縮。

 このうち、5番は野党も賛成するもので何ら問題なく、7番は日本国憲法29条に相当するもので当然の規定です。9番も、日本でも第2次大戦後すぐに地主制が解体されたこと、中南米では大土地所有が問題視されてきたことを考えれば、十分肯けるものです。10番は国民から歓迎されていたそうですから問題ないでしょう。

 8番は、独特のものですが、ここでは無視しておきます。

 報道から推測するに、改正反対派が問題にしていたのは、1番~4番、特に1番の「社会主義」をあらゆる私有財産の剥奪と宣伝し、2番を「独裁権力の強化」とか「永久権力のねらい」と批判し、4番を民主主義の大きな問題だと批判しました。

 これに対し、チャベス大統領が言う「社会主義」とは、6番を中核として5番~10番のような内実を言うものだと思われます。だとすれば、先に述べたようにさほど問題のあるものとは思えませんし、反対派も少なくとも中心問題とはしませんでした。反対派は「社会主義」を私有財産の剥奪と勝手に見なして大規模に宣伝したようですが、これは完全なデマであり、むしろ国民投票の公正を損なうものとして規制されてしかるべきものでした。

 そうすると、反対派の言う改正案の問題点のうち真面目に考慮されるべきものは、2番、3番、4番ということになります。

 ただ、2番については、「独裁権力」とか「永久権力」といった批判は言い過ぎで成り立つものではありません。任期が長くても、再選が許されても選挙が保障されているからです。

 3番については、たぶん2004年8月15日の大統領リコールの国民投票のような事態を防ぎたいというものなのでしょう。このときは、選挙人の10%の署名でリコールが成立しながら、国民投票の結果はチャベス大統領が58%の支持を集めてリコールが否決されたからです。

 4番については、2002年4月11日に発生し、2日で崩壊したクーデターのとき、マスコミがクーデターに積極的に加担し、その後も何ら反省せず、また法的に規制されないままになっているという歴史と実情があることが想起されねばなりません。

 もちろん、2番、3番、4番については、一般論としては考えねばならない点があります。

 しかし、この間のベネズエラの実際の政治の流れの中では、それなりの根拠があることも考えられねばなりません。

 少なくとも、今回の改正反対派は、この改正を余儀なくさせた張本人たちであることは十分考慮されるべきでしょう。

 それでも、ベネズエラ国民は改正反対を選択しました。何だかベネズエラ国民の力強さを見せられたような気がしますチャベス大統領が追い詰められたような報道が圧倒的なようですが、僕にはその逆のように感じられてなりません

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 しんぶん赤旗の記事を引用しておきます。

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2007年11月27日 (火)

ベネズエラ憲法改正案、国民投票まで1週間

 正確な情報が余り無いので、自分の勉強のためにしんぶん赤旗の記事をクリップしておきます。

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2007年11月26日 (月)

カルロス・スペイン国王のチャベス・ベネズエラ大統領への「黙れ」発言をめぐって

 どういうことか今一つ分からなかったのですが、真相が見えてきました。しんぶん赤旗と朝日の記事を引用しておきます。

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