松竹伸幸『幻想の抑止力 沖縄に海兵隊はいらない』
昨日、一気に読みました(「まえがき」、「あとがき」込みで110ページです)。待ちわびていた本です。思ってた以上に基礎的で分かりやすく、面白い。
しばらく前から耳にし始めた「沖縄のアメリカ海兵隊は抑止力」との説明、不勉強な僕にとっては唐突で意味不明なものでした。「核抑止力」という言葉なら昔から耳にたこができるほど聞かされてきましたが、通常戦力のアメリカ軍自体が抑止力だとの説明は初めて聞いたものだったからです。一体いつからそんな理論ができたんだろうと疑問に思ったんです。
しかも、この「抑止力」という言葉は、「日本の防衛の役に立っている」、「日本の防衛に必要だ」という意味を持たせられながら使われているようなので、よけい疑問に思いました。この本にも引用されていますが(pp.77-78)、既に(1982年4月)当時のワインバーガー国防長官が正式な場である上院歳出委員会で、しかも書面で、「沖縄の海兵隊は、日本の防衛にはあてられてない。」と明言しているからです。日本防衛の任務のないアメリカ海兵隊が、日本防衛の役に立つなんて、論理的に成り立たない。
著者は、抑止力とはそもそもどんなものか(第1章)、抑止力だと言われている海兵隊がどんなものか(第2章)を検討した上で、沖縄の海兵隊が抑止力なのかという問題に解答を与えます(第3章(1)-(4))。その上で、抑止力論という曖昧で不確かな日本防衛論ではなく、集団安全保障理論を発展させた、北東アジア集団安全保障機構という、具体的で現実的な日本防衛論を提起します(第3章(5))。
僕がさしあたって欲しかったのは、抑止力(論)とは何か、海兵隊とは何かについてのまとまった知識でしたが、著者はそれには、第1章、第2章で、誰にでも分かるような易しさと具体性をもって答えてくれました。が、それを越えて、抑止力論に代わる防衛構想(北東アジア集団安全保障機構)を具体的に示してくれました。予想以上に面白かった所以です。また、ここまで記述が及んでいるが故に、日本の安全保障をまじめに考えたい人にとっては、視野の広い、前向きな議論の材料を提供してくれていると思います。
かもがわ出版、900円(税別)。多くの方に読んで頂きたい。
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