カテゴリー「政治3(世界1-アメリカ1)」の7件の記事

2010年8月 8日 (日)

富裕層減税は、財政悪化を招くだけでなく、経済的な効果薄い(ガイトナー米財務長官)

 日本での同じ問題点には、まだ何も手がつけられていません。

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米財務長官、富裕層減税の終了を主張
「経済効果薄く予定通りに」

(日経夕刊 2010.08.05)

 【ワシントン=御調昌邦】ガイトナー米財務長官はワシントン市内で4日講演し、財政再建などに向け「最善の方法は(所得の高い)上位2%の税率を1990年代の終わりの水準に戻すことだ」と述べ、富裕層を対象とした減税を今年末で予定通り終了すべきだと主張した。この減税は財政悪化を招くだけでなく、経済的な効果も薄いと強調した。

 一方で共和党はこの減税措置の継続を求めており、11月の中間選挙に向けた主要な争点の一つに浮上しつつある。

 焦点になっているのはブッシュ前政権が導入した大型減税の扱い。ガイトナー長官は世帯年収が25万ドル(約2200万円)以上の人などへの減税を終了させるべきだと主張する一方、中間層への減税は「景気回復を続けるうえで欠かせない」として、継続する必要があると主張した。

 この点に関して「米議会が上位2%への減税を延長するまで、中間層への減税を(決定しないで)人質にすべきだという人がいるが、これは誤りだ」と発言。政治的な取引の材料にすべきではないとの認識を示した。中間層への減税を延長しなければ「急激な増税になり、可処分所得が大きく下がる」と説明し、景気の低迷を招くと指摘した。

 富裕層減税を続ければ10年間で7000億ドルの資金を国債発行などで調達する必要があり、公的債務が持続不可能な水準に達すると警告した。

 共和党は富裕層への減税を終了すれば、中小経営者などが痛手を被って、企業の雇用を減らすと主張している。ガイトナー長官は「富裕層への減税終了で、影響を受ける中小企業のオーナーは3%未満」として、雇用への打撃はほとんどないと分析した。

2010年8月6日(金)「しんぶん赤旗」

米、金持ち優遇脱却へ
高所得減税延長せず
ブッシユ時代に開始 財務長官が言明

 【ワシントン=西村央】ガイトナー米財務長官は4日、ワシントン市内での演説で、今年末で期限切れとなるブッシュ政権時代に始められた年収25万ドル(約2200万円)以上の高額所得者減税について、財政難が続いているなかで「必要とする処方箋(せん)ではない」として、この措置を延長しないことを表明しました。

 オバマ政権が今年2月に発表した予算教書では、年収25万ドル以上の高額所得者への所得税減税の打ち切りを盛り込んでおり、ガイトナー氏のこの日の表明は、この方針に向けた政権の構えを重ねて示したものです。

 かつて米国では所得税の最高税率は70%でした(1981年まで)が、ブッシュ政権時代に2度にわたって高額所得者減税が実施されました。25万ドル以上の高額所得者の所得税率は2010年までを期限とし、35%にまで引き下げられていました。

 ガイトナー長官は、25万ドル以上という高額所得者は、全体の2%にすぎず、その平均所得は80万ドル(約6900万円)にも上っていると指摘。「約2%の最高額所得層の減税措置の延長は、政府にとって1年間で300億ドルもの借り入れを必要とすることになる」と述べました。

 そのうえで、同じ金額を中間層向けの減税や中小企業の投資促進に使用することが、景気回復により効果的であるとの議会調査局の提案には多くのエコノミストが賛同していると述べ、ブッシュ政権時代の金持ち優遇措置から脱却する必要性を強調しました。

"労働者の生活大事"
労組会合でオバマ氏

 【ワシントン=小林俊哉】オバマ米大統領は4日、ワシントン市内で、米労働総同盟産別会議(AFL・CIO)の役員を前に演説し、「企業は、労働者にましな給料を支払い、まともな待遇をし、尊厳をもって対応してこそ、より強くなれる」と述べ、オバマ政権の労働政策への支持を訴えました。

 オバマ氏は、ブッシュ前政権が大企業優遇政策をとってきたことを批判する一方、長引く不況で労働者世帯が厳しい生活実態にあることを指摘。自身の政権発足後、医療保険制度改革などで、労働者の生活を重視する政策を採用してきたと強調しました。

 また、オバマ氏は、労働運動が労組結成や雇用者側との交渉をよりやりやすくすることを主眼とした「被雇用者自由選択法案」について、「法案を議会で通過させるのは、なかなか難しい課題だ。しかし、われわれは求め続ける」とのべ、法案の成立に向けて引き続き取り組む意向を表明しました。

2009年3月 4日 (水)

オバマ氏が「中道左派」「社民主義」「革命」???!!!

 新自由主義というものは、僕にはカルト集団の根拠無き「信仰」にしか見えないし(2008年9月19日の記事)、既に各国でその誤りが何度も実証され、かつ今は世界的規模でその誤りが実証され始めていると思うのですが、アメリカのジャーナリスト達はまだまだその迷妄から解放されてないようです。個人的なことなら放っておいてもいいのですが、社会的なことですからそういう訳にも行きません。やれやれ・・・。

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2009年3月3日(火)「しんぶん赤旗」

米メディア 予算教書めぐり議論百出
「中道左派」「社民主義」「革命」
保守派 警戒心あらわ

 「中道左派」「社民主義」「革命」―オバマ米大統領が概要を発表した二〇一〇会計年度の予算教書をめぐり、米メディアで議論が百出、とくに保守派が警戒心をあらわにしています。(ワシントン=小林俊哉)

 「中道左派予算」と評したのはCNNのキャンディー・クローリー政治担当上級記者。レーガン政権以来約三十年間、経済格差の拡大を当然視した「新自由主義」の考え方が主流だったなかで、「庶民減税」「金持ち増税」を打ち出した予算教書は「中道左派」に見えるようです。

 保守派の政治評論家チャールズ・クラウトハマー氏が二月二十七日付ワシントン・ポスト紙に掲載したコラムの題名は、『共産党宣言』をもじった「オバマ党宣言」。オバマ氏の施政方針演説は「かつてどの米大統領もしなかった、最も大胆な社民主義宣言」と評しています。

 オバマ氏が医療保険制度の拡充、高等教育費への補助などを打ち出したことをさして、「規制が強く、経済は硬直化し、社会は停滞し、過保護な欧州連合」型の社会経済に導くものだと指摘。“小さな政府”の立場から保守派に“警戒”を呼びかけています。

 新自由主義経済政策を強硬に擁護してきたウォール・ストリート・ジャーナル紙は、二十七日付一面で、今回の予算教書を「トリクル・アップ」と表現。大企業・大資産家を優遇すれば、そのおこぼれが庶民に回るとした新自由主義流「トリクル・ダウン」理論を真っ向から否定するものだといいたげです。

 さらに同紙は「オバマ革命」と題する社説で、「オバマ氏は連邦政府の役割を拡大しようとしているだけではなく、もう政府の力に逆らい得ないという決定的なところに至ろうとしている」と主張。「一年か二年後に、米国人が今とは非常に違った国に住んでいるというようなことがないよう、(野党)共和党は重大な議論を続ける義務がある」と物々しい調子です。

 ニューヨーク・タイムズ紙は二十七日付一面で、「なにはさておき、オバマ氏の提案は、過去三十年間、急速に拡大した経済格差に歯止めをかけようとするもの」とする解説記事を掲載。レーガン政権以来、米経済政策を支配してきた考えから決別する「大胆でラジカルでさえある門出」と分析しました。

2009年2月28日(土)「しんぶん赤旗」

環境・教育・医療に重点
米予算教書 財政赤字は最大規模

 【ワシントン=西村央】オバマ米大統領は二十六日、中期の財政見通しと、二〇一〇会計年度(〇九年十月-一〇年九月)予算の基本方針からなる予算教書の概要を発表しました。オバマ大統領は発表にあたって「米国をより強くするための投資や、経済の進展のための支出は犠牲にしない」と表明。環境・エネルギー、教育、医療の三分野を重点にすると強調しました。

 一〇年度は歳入が二兆三千八百十億ドル、歳出が三兆五千五百二十億ドルとなっています。

 環境分野では、二酸化炭素の排出権制度を創設し、一二年から一九年までに六千四百六十億ドルの収入を見込んでいます。石油・ガス会社に対する減税措置の撤廃も打ち出しています。

 教育分野では初等教育に重点を置いて、州への支援を強化。医療分野では、国民皆保険をめざす改革のための準備基金を創設する方針を打ち出しました。

 金融支援策では、昨年の公的資金投入枠七千億ドルに加え、必要に応じて追加できるよう、二千五百億ドルの財政出動を可能とする内容を盛り込んでいます。

 景気対策や戦費などがかさみ、〇九年度は財政赤字が一兆七千五百二十億ドルと史上最大規模となります。一〇年度も引き続き一兆ドルを超える赤字を見込んでいますが、大統領一期目の任期が終了する一三年度までに五千三百三十億ドルまで圧縮するとしています。

 財政赤字を実質GDP(国内総生産)比でみると、〇九年度は12・3%で第一次世界大戦以降では最悪。一三年ではこれを3・0%まで削減する方針です。

 今回の予算教書は就任後間もないため、概要にとどめ、詳細は四月ごろ発表の予定です。

イラク・アフガン戦費は減

 【ワシントン=小林俊哉】オバマ米大統領が二十六日に議会に送付した二〇一〇会計年度の予算教書の概要で、イラク・アフガン戦費は千三百億ドルとなり、〇八会計年度の千九百億ドルから若干の減額となっています。

 オバマ政権は、十四万人規模でイラクに駐留する米軍を段階的に撤退させ、戦費を大幅に削減するとしていますが、本格的削減は一一会計年度以降に持ち越されました。

 アフガン、イラクの七年以上に及ぶ戦争で兵士に負担がかかっているとして、陸軍を現在の約四十九万人から五十四万七千四百人に、海兵隊を現在の約十九万人から二十万二千人に増員する予算措置も要求しました。

 さらに兵器の開発、調達には巨額の経費がかかることから、調達プロセスの改善で効率化をはかるとの方針も盛り込まれました。しかし、現在、国防総省で検討が続いており、具体策への言及はありませんでした。

 またエネルギー省予算に盛り込まれた核兵器関連予算では、事実上の新型核兵器開発となる「信頼できる交代用核弾頭」(RRW)の開発費用の削除が明記されました。

2008年10月 1日 (水)

笹川堯・自民党総務会長「女性議長だから否決」「ひがみがある」

 アメリカ下院での金融安定化法案否決に関するコメントです。金融危機を真面目に考えたこともなければ、そのつもりもない人の放言です。与党・自民党の政治能力の程度がよく表れています。

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「女性議長だから否決に」  自民党総務会長
(共同通信電子版 2008/09/30 13:55)

 自民党の笹川尭総務会長は30日、国際的な金融不安を広げた米下院の緊急経済安定化法案否決をめぐり「下院議長は女性で、男性とはリードがひと味違う感じがする。それで破裂した」と述べ、女性議長だったことが否決の一因との認識を強調した。国会内で記者団に述べた。

 女性蔑視とも受け取れる発言だけに、女性団体などから批判が出る可能性もありそうだ。

 笹川氏はまた、同法案に反対した下院議員について「(米国では)企業の代表取締役が高給、すごいボーナスをもらっているので、ひがみがある。それが出てしまった」と述べた。

「議長が女性、それで破裂」=米金融法案否決で笹川氏
(時事通信電子版 2008/09/30-21:05)

 自民党の笹川堯総務会長は30日、米下院が金融安定化法案を否決したことに関し、国会内で記者団に対し「下院議長は女性でしょう。やっぱり男性とは一味違うような気がする、リードが。それで破裂した」と語った。女性差別と受け取られかねない発言で、批判を招く可能性もある。

 笹川氏はその後、前橋市内で記者団に「そんなことは言っていない」として、差別する意図はなかったと釈明した。 (了)

自民党:笹川総務会長「下院議長は女性。それで破裂した」
(毎日新聞電子版 2008年9月30日 23時06分)

 自民党の笹川尭総務会長は30日、国会内で記者団に、米下院が金融安定化法案を否決して世界的な金融不安が拡大した問題で「特に下院議長は女性。ちょっと男性とはひと味違うような気がする、リードが。それで破裂した」と語った。女性差別とも受け止められる発言で、物議を醸すことも考えられる。

 その後、笹川氏は前橋市で記者団に「失言でも何でもない。『下院がまとめられなかった。議長は女性だ』と言っただけ。女性だからまとめられなかったとは一言も言っていない」と述べた。

2008年9月30日 (火)

アメリカ下院が金融安定化法案を否決したのはそんなに間違ったことか?

20080930e  29日、ニューヨーク株式市場ではダウ工業株30種平均が777ドルという史上最大の下げ幅を記録したそうですが、その原因はアメリカ下院が同日、不良資産の買い取りを柱とした金融安定化法案を否決したことだそうです。

 今の金融危機は緊急に解決されなければならないものですから、この法案に反対した議員は、自分の目先の利益のためにこの危機解決に背を向けたものとして、市場やマスコミなどから強く批判されています。

 この法案に反対した議員は、共和党では7割近く(賛成65人、反対133人)、民主党では4割(賛成140人、反対95人)いたそうですが、その賛成・反対の内実は以下のようなもののようです。

(日経 2008.09.30.夕刊2面から)

 (ポールソン米財務長官は)法案を巡る議会との協議では「金融不安に歯止めをかけないと、自動車ローンや教育ローンの貸し渋りが広がる」と説明。税金投入は金融安定を通じて、住宅ローンの借り手保護や実体経済の下支えを狙うのが目的と繰り返した。だが、自らが証券大手ゴールドマン・サックス出身だけに「税金で仲間を助けるのか」との疑念を拡大。金融の安定が経済社会の土台であることへの理解は深まらなかった。

 下院共和党で指導部に造反したのは市場原理を重視し、税金投入に反対する保守派。「民主党のペロシ下院議長の指導力不足だ」(カンター下院議員)と、公的資金ありきの法案協議に批判のトーンを高める。一方、下院民主党の造反議員は「ウォール街ではなく、普通の国民の救済が必要」として中堅層向けの景気対策を主張。同じ造反組でも、公的資金を巡る共和、民主両党議員の主張は真っ向から対立している。

 またこの議員の行動を支えるアメリカ国民の反応は、以下のようなもののようです。

米金融機関救済
米市民、賛否が交錯

「税金で救いたくない」
「他に選択肢ないから」

(日経 2008.09.30.夕刊)

 米金融安定化法案が議会で否決された二十九日、街頭の市民は政治への不信感とともに、政府が金融機関を救済することへの根強い抵抗感をあらわにした。

 「実はちょっとハッピーなんだ。へまをしたウォール街の連中を我々の税金で救いたくはないからね」。ニュージャージー州在住の保険会社社員、マイケル・クレイマー氏(26)は、法案否決を歓迎した。

 コネティカット州の中堅企業役員、エド・シー氏(49)も政府救済には反対の立場。「民主、共和両党は何も決められず、互いに非難ばかりしている。政治には失望した」と不満げだ。

 ニューヨークの男性ミュージシャン(50)は「議会は法案を通過させるべきだった」と語る。ただし、法案支持の理由は「金融機関のために自分の金をつぎ込みたくはないが、危機を乗り切るのに他に選択肢はなさそうだから……」。

 ラジオ局に勤める年配の女性は「株価が下がり、401k(確定拠出年金)がどうなるか心配。何十年も働いてきたのに、いつ引退できるか分からなくなってきた」と不安を口にした。

(ニューヨーク=中前博之)

 アメリカ政府や賛成した議員、市場関係者やマスコミの主張では、上記引用中の「金融の安定が経済社会の土台であることへの理解は深まらなかった」という書き方にも滲(にじ)んでいるように、国民の不合理な意識(感情論)とそれに迎合する議員が金融危機を深めたということのようですが、上記に引用したような反対派議員の主張やアメリカ国民の意識は、そんなにおかしいものなのでしょうか?

 僕にはそれらの主張の方が合理性あるものに思えてなりません。この合理的な主張を生かした危機対策が求められているのだと思います。

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2008年6月17日 (火)

アメリカ議会で、大企業の経営のあり方に批判相次ぐ

 聞いただけではアメリカ議会での発言とは思えないような証言が相次いでいるそうです。

ラルフ・ゴモリー氏(元IBM社研究担当副社長)

 「地球的規模で展開する米国企業にとってよいことが、必ずしも米国経済にとってよいとはもはや限らない」。

 企業には「人々が生産やサービスに従事できるようにする」という「社会的な役割」がある。

ブルース・スコット教授(ハーバード大学ビジネス・スクール)

 「一九八〇年以来行われてきた米国の規制緩和は効率化を促すことをもくろんだ戦略だったが、あわせて、労働者を犠牲にして資本家に恩恵をもたらすことももくろんだものだった」。

 この10年ほど、アメリカに合わせて会社法や労働法などを改定してきた日本にとっても他人事ではありません。

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 より詳しくは以下に引用するしんぶん赤旗の記事をどうぞ。

続きを読む "アメリカ議会で、大企業の経営のあり方に批判相次ぐ" »

2007年9月18日 (火)

映画「シッコSiCKO」(追加)

 噂に違わずすばらしい映画でした。先進資本主義国で唯一国民皆保険制度のないアメリカの悲惨な実態を、知らない人はもちろん、知っている人にも是非見て欲しい映画だと思いました。

 僕もその一端は知っているつもりでしたが、当事者の生の言葉と映像はやはり力を持ちます。十人十色の様々な実態には涙を禁じ得ませんでした。

 この映画の持つ力の一端は、しばらく前にTBをいただいていますが、morichanのブログ「関係性」「『シッコ』で描く医療の現実(上)」という記事で紹介されています。そこに紹介されているような力を持つ映画だと思います。

 また、この映画に対する様々な批評や日本の医療制度の問題は、このブログの「『シッコ』で描く医療の現実(下)」という記事で紹介されています。

 さらに、「花・髪切と思考の浮游空間」にもタイミング良く19日に「ヒラリーと国民皆保険」と題する記事が書かれたので、過去の記事と共にリンクしておきます。

9月19日「ヒラリーと国民皆保険」

6月21日「マイケル・ムーア作品「シッコ」公開へ;米医療制度を批判」

6月21日「市場原理主義の怖さ;アメリカの実情は日本の将来図」

5月20日「マイケル・ムーアの告発は対岸の火事か?」

 この中で6月21日付の記事でリンクされている「暗いニュースリンク」の記事にもリンクしておきます。

2005年2月7日「アメリカ:個人破産の半数は高額な医療費が原因(ロイター通信2005/02/02付け記事)」

 アメリカの悲惨極まりない実態は、実際にこの映画を見ていただくとして、今や当たり前と言うべき国民皆保険制度の導入を、アメリカの政治家たちは何を根拠に拒絶してきたのか。

 「社会主義」ということなんだそうです。国民皆保険制度は、医療を民間の手から国家が奪い取るが故に、社会主義の制度であり、社会主義であるが故に、強制労働とあらゆる自由の剥奪、そして貧しい生活へと導くのだそうです。こんな嘘八百の馬鹿げた議論を、様々な政治家やメディアがキャンペーンするのです。その政治家たちは、例外なく医療で巨額の利益を上げている民間保険会社から多額の献金を受け取っています。

 この「国民皆保険制度は社会主義だ」という議論には二重の誤りがあります。

 第1に、国民皆保険制度もさらには医療費無料制度は、社会主義に特有の制度ではありません。映画の中でも紹介されているカナダ、イギリス、フランスにはこの制度がありますが、それらの国は資本主義の国であって社会主義ではありません。また、この制度が実現されているが故に社会主義に向かっているなどと言う人はどこにもいないでしょう。

 第2に、社会主義は、強制労働・自由の剥奪・貧困を導く制度ではありません。人間の生存に不可欠である人間の経済活動の動機を、企業利潤の無限の増大ということから、人間1人1人の自由の無限の増大・向上へと切り替える制度です。崩壊したソ連は自らを社会主義だと言っていた訳ですが、社会主義を自由の剥奪等と理解することは、この旧ソ連の言い分を無条件に受け入れるものでしかありません。ソ連崩壊から16年、もうそろそろこのソ連追従の思考から卒業してもいい頃でしょう。

 アメリカの政治家たちが、国民皆保険制度の導入を拒絶する理由を社会主義だとしていることは、この導入拒絶に何らの正当な理由を挙げられないということを意味しています。国民皆保険制度はそれほどまでに当たり前の制度だということです。

 なお、劇場で買ったパンフレットを開くと、デーブ・スペクター氏が、「マイケル・ムーアはジャーナリストとして失格」だとして、「本来入れるべき事実やデータを意図的に落として作品を作っている」と指摘し、「アメリカの医療技術や製薬技術は世界ナンバーワンなんですよ」と述べています。

 しかし、これは極めて不真面目・不見識な者の戯言というべきでしょう。国民皆保険制度と医療技術の向上は全く別の問題だからです。

 上述の「社会主義論」といいこの「医療技術向上論」といい、自らの議論の正当性を主張できない者が最後に頼る「論点のはぐらかし・すり替え」と言うべきです。この「医療技術向上論」をわざわざパンフレットに掲載した編集者は、パンフレット自体を汚す者として批判されるべきです。掲載しないのが正しい態度でした。

 最後に、このパンフレットには、全国保険医団体・理事の三浦清春さんとおっしゃる方が、アメリカと日本の医療制度について解説されています。その中で、日本の医療制度を考えるに当たっての5つの教訓をこの映画から読み取っています。大切だと思うので引用しておきます。

 (1) 国の責任で社会保障としての国民皆保険制度を堅持することである。それがすべての医療改革の土台であり、すべての国民のためであり、そしてそれが世界の大勢である。医療には、市場化・営利化はなじまないのである。

 (2) 保険給付は「現物給付」で、窓口一部負担や混合診療は原則禁止にすることである。自己負担や自費診療があると必ず医療を受けられない人が出てくる。

 (3) 民間医療保険は公的医療保険に決して代われるものではないということである。民間医療保険は医療を最も必要とする人を真っ先に排除するからである。

 (4) ひとたび医療分野を営利企業に開放してしまうと、もう元の医療制度に戻すことはきわめて困難となるということである。アメリカでは有力議員は共和党も民主党も関係なく保険会社や製薬企業から多額の献金をもらっている。国民皆保険制度を目指したあのヒラリー・クリントン議員さえも例外ではない。

 (5) 政府のプロパガンダで洗脳されないことである。アメリカ政府は国民皆保険制度にすれば共産主義になると国民を脅し続けてきた。国民皆保険制度は資本主義も社会主義も関係ない話なのである。

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2007年1月 9日 (火)

石油からの脱却(地球特派員スペシャル「地球マップ2007“格差”と“競争”にどう立ち向かうか」)

 地球特派員スペシャルのメモの第4弾です。今回は、資源獲得競争と原油高騰の中、ガソリンを余り使わないエコカーやハイブリッドカーの開発競争が取材されます。

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