たまたまテレビ放映されるのを見付けて見た作品ですが、イスラエルのエチオピア系ユダヤ人を素材にした人間愛のドラマで、2時間30分程の長い作品ながら、退屈せずに楽しめる、感動作です。
ただ、このエチオピア系ユダヤ人は、イスラエル政府が、国の政策として、能動的に、エチオピアの中のユダヤ人と看做した人達を移住させたものですが(今も継続されているはずです)、にも拘わらず、イスラエル国内では激しい差別を受け、イスラエル政府からも極めてぞんざいに扱われます。この作品には、その様が映画の娯楽性を損なわない形で描き込まれており、強い憤りを覚えさせられます。ユダヤ教の特殊な解釈を何の媒介もなくそのまま国の政策とするというイスラエル政治のイデオロギー性が、当のユダヤ人達の人格と人生をこんなにも歪ませ抑圧するのだといういことを、この作品は分からせてくれました。日本政府による、日本人の満州移民政策や、朝鮮人の強制連行政策を思い起こさせます。
養母ヤエルを演じたヤエル・アベカシスさんが、とても魅力的な俳優でした。
以下のページがこの作品の理解を助けてくれるかも知れません。
『約束の旅路』に感動する前に――ホンモノのユダヤ人とニセモノのユダヤ人の区別?
エチオピアの「ユダヤ人」の「人権問題」?
イスラエル社会の最下層を構成するエチオピア系ユダヤ人
イェシム・ウスタオウル監督・脚本。2004年トルコ映画。2003年サンダンス・NHK国際映像作家賞受賞作品。5月10日未明(9日深夜)にNHK BS 2で放送されたものを録画して見ました。
小品の趣ながら重いテーマを扱った素晴らしい作品でした。他民族・少数民族への拝外主義的な政治が、1人1人の人生に与える取り返しの付かない苦難と苦痛を、温かい目で、胸に沁みる形で描きます。
サンダンス・NHK国際映像作家賞のホームページでは、あらすじを、「第一次世界大戦とオスマン帝国崩壊の結果、黒海周辺地域のギリシア人はトルコを追われた。アイシェはそうした国を追われたギリシア人の娘だった。トルコ人家族に助けられ、トルコ人として生きてきたが、年老いて家族もなくなった今、トルコに自分の居場所はなかった。アイシェは生き別れた弟に会うため、ギリシアへ向かう。」と紹介しています。
トラン・アン・ユン監督。
同じ監督の「青いパパイヤの香り」(2008年8月17日の記事)を気に入っていたので、期待して見に行きましたが、つまらない作品でした。
もちろん何かを考えたり感じたりして作ったのでしょうが、それは、単に監督個人の頭の中だけに浮かんだ観念的、自己満足的なものに過ぎず、僕には何も迫ってきませんでした。
駄作、失敗作だと思います。
ピエール・ショレール監督。ギョーム・ドパルデュー主演。
かなり良い作品でした。
パリで小学生低学年くらいの子供と共にホームレス生活に陥った母親が、ベルサイユ宮殿を囲む森の中でホームレス生活を送る30代の男(ギョーム・ドパルデュー)と出会います。森の中では他にも何人かのホームレスが生活しています。母親は、男の下に子供を置いて、ホームレス生活から抜け出す努力を必死で始め、成功します。男は、子供のためにホームレス生活から抜け出す努力を始め、失敗します。その間に、森の中のホームレス達の生活と会話(思想)、そしてその1人の死が描かれます。また、男とその父親の葛藤、生活、会話(思想)も描かれます。子供も、男と父親ならびにその伴侶のお蔭でホームレス生活から抜け出します。これらを通じて、ホームレスを巡るフランスの社会と制度が描き込まれています。
事情も異なり、感じ方・考え方も異なり、従ってその後の人生の展開も異なる3人のホームレスの人間を描くことによって、ショレール監督に依れば90万人のホームレスを抱えるフランス社会を見せ、感じ考えさせてくれた作品でした。
ショレール監督は、「我が国は目には見えない社会的な分裂状態にあります。」「今や見失われつつある人権社会ですが、壮麗な宮殿のように、まだ現在も確かに存在するのです。この国の不正を語ることが、ベルサイユ宮殿が象徴するフランスの黄金期を取り戻す最初の一歩である。」と語ります。
ジャン=ピエール & リュック・ダルデンヌ監督。
アルコールと男への依存を断ち切れず、生活の意志も能力も失ってしまった母親と2人暮らしの少女ロゼッタは、貧困故にキャンプ場に停めたキャンピングカーを借りて生活する身だが、真っ当な生活、従って真っ当な仕事を求めて這いずり回り、その中で人と巡り会い、もがいて行く、その姿を描いた作品。
出会いの中にささやかな癒しや希望を得ますが、自らの仕事欲しさにその出会いを裏切りもします。しかし、そうでありながら罪の意識も抱かざるを得ず、ほんのちらりと希望も垣間見せながら映画は終わります。
安易な解決や希望に逃げない監督の冷徹な目が感じられて、とても良い作品でした。
ジャン=ピエール & リュック・ダルデンヌ監督。
不法移民の斡旋を生業とする父親に従ってそれを手伝う少年イゴールが、ブルキナファソ出身の移民の事故に遭遇した際、父親の命に従って治療しないまま死なせてしまい、その死んだ移民の妻にも嘘をつき続けるが、その移民が亡くなる直前に交わした妻子を守るという約束を忘れられず、ついには父親の命に反抗してその妻子を守り始め、最後には自分達が死なせたことを告白してしまう物語。
屁理屈で自分を納得させながら犯罪的行為を繰り返す父親に、当然のように従属していた少年が、人の死を切っ掛けに逡巡・葛藤を経てそこからの脱却に踏み出しますが、踏み出したからといって単純に解決や希望が与えられる訳ではない、そういう人と社会の姿をきちんと捉えようとしていて、良い作品でした。
ただ、1度見ただけの感想としては、「息子のまなざし」や「ロゼッタ」の方がもっと良かったかな。
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