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2010年5月24日 (月)

司馬遼太郎『坂の上の雲』(文春文庫 全8巻)

 ある程度期待しながら読み始めたのですが、全くつまらない作品でした。

 秋山好古・真之兄弟と正岡子規の人生を軸に明治時代が描かれているのかと思って読み始めたのですが、書いてあるのは、日露戦争であり、しかも現場の指揮官の目で見た戦場での戦闘ばかりでした。

 日露戦争の戦場を描いたものなぞ読んだことがありませんから、それなりに勉強になりましたし、また、確かに司馬さんは筆力があって相当の迫力やリアリティーを感じさせられました。

 しかし、この作品が明治という時代やその時期の日本人を描いていると言われると、とたんに眉に唾せざるを得ません。それらが、現場指揮官の見た日露戦争の戦場に集約されているとは、とても思えないからです。実際、この作品を読んでも、僕にはそのようには感じられませんでした。この作品には、司馬さんの固定観念とでも言うべきものが、様々に散りばめられているように思いましたが、それを前提にして初めて、日露戦争の戦場がそのように見えてくるのだと思います。

 司馬さんは、この作品は「事実に拘束されることが百パーセントにちかい」と何度か述べていますし、戦場の細々した事柄については確かにそうなのでしょうが、明治という時代やその時期の日本人の全体については、このご本人の言は当たってないと思います。

 結局この作品は、戦争評論家のような目で日露戦争の戦場を観察・考察したい人には意義のあるものかもしれませんが、秋山兄弟と子規の人生、あるいは明治という時代を把握・理解したい人にとっては、むしろ有害なものだと思いました。

 なお、作品中に織り込まれている司馬さんの様々な論評とその語り口は、僕にはとても偉そうに感じられ、たびたび鼻白む思いや不快感を抱かされました。

 また、この文庫版の解説は島田謹二氏が書いていますが、内容においても形式においても何とも下品な文章で、僕は評価しないにしてもそれなりの品格を持つ司馬さんの作品を、汚しているだけの印象を持ちました。これだけ売れ続けている本なのですから、出版社は、作品にふさわしい内容・形式を持つ解説に差し替える見識を持つべきだと思います。

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