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2008年9月17日 (水)

映画「君の涙ドナウに流れ ハンガリー1956」

 クリスティナ・ゴダ監督。

 1956年のハンガリー事件を描いているというので見ました。オリンピック出場の水球選手と、ソ連によるハンガリー支配に抵抗する学生運動の中心人物たる女性との恋愛を軸に、ハンガリー事件とメルボルンの流血戦という史実を描いています。歴史的事実を忠実に描いてあると思われ、とても感動的な作品でした。

 今の目で見ると、抵抗する国民の、支配者たるソ連やハンガリー国内の権力者に対する見方や国際情勢の見方にかなりの甘さを感じざるを得ず、見ているこちらはある種の悔しさを禁じ得ないのですが、さしたる方針や理論がないにも拘わらずあれだけ多くのハンガリーの人達が立ち上がる所に、已むに已まれぬ思いが感じられ感動的です。

 ただ、いかにもハリウッド的と言うかアメリカ的と言うか、適切な言葉が思い浮かびませんが、そういった風な描き方がしてあって、当時のハンガリーやハンガリー人の状況や気持ちを描き切っているかと言うと、どうもそうではないだろうという疑念がぬぐえません。ソ連に対抗ないし対置するものと言えばアメリカないしアメリカ的自由だろうという単純化された先入観が制作者の側にあって、却ってリアリティーを削いでいるのではないかと思われてなりません。

 このような先入観にとらわれている限り、ソ連に対する批判も不正確なものとなり、従って極めて不十分なものになってしまうと思いますし、何よりもハンガリーないしハンガリー人そのもの、あるいはハンガリーの歴史そのものを歪めることになるような気がするのです。ソ連に対置すべきものは、アメリカではなくハンガリーであるはずです。

 「存在の耐えられない軽さ」のような駄作とまではもちろん思いませんが、残念な点でした。

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映画・テレビ3(ヨーロッパ)」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
たしかに、製作チームはハリウッドでも活躍しているハンガリー出身者チームですが、アメリカ的自由の礼賛とは、少し異なると思います。ファシズム以降のハンガリーでは、ソ連が解放勢力であり人民の側にあるという幻想も初期はあったと思います。でも、結局、ソ連の権力傀儡の秘密警察の問題など、管理と抑圧はなにも変わらなかった。
まず、権力をハンガリーの人民に帰属させようというナショナリズムであったと思います。
結局、国際的な政治の駆け引きの中で、アメリカなど西側陣営の支援はいっさいなかった。というより、東西冷戦の政治的駆け引きの道具にされたという醒めた思いがあると思います。

 kimion20002000さんこんにちは。TBとコメントをありがとうございます。何か映画を観たときはkimion20002000さんはどう思ったんだろうとブログを拝見させてもらってました。最近ちょっと見るのをさぼってましたが(^^;。

 TBを頂いた記事を読むと1953年生まれの方とのこと、私より3つ先輩ということで近しく感じました。また、この問題についてかなり考えてきた方なんだなと思い、そうではない私は少々恥ずかしさも覚えました。

 「アメリカ的自由の礼賛とは、少し異な」り、アメリカに対してはむしろ「東西冷戦の政治的駆け引きの道具にされたという醒めた思いがある」と言われれば、確かにその通りだと思います。その点もきちんと描き込んでいました。

 ただこの映画に今一つ物足りない思いを抱いたのも事実なんです。感動作なんだけど、手放しで絶賛する気になれないものを感じたんです。もしかしたら期待が大きすぎただけなのかも知れませんが、それだけではないだろうと思っています。一体何なんでしょうね?

 1つは、主人公の男性水球選手がこの運動に加わり、また水球チームに戻り、あるいは女子学生に恋をし、その女性も男性に恋をし、といったそれぞれの行動にもう一つ納得できないものを感じさせる、そのストーリーの組み立ての甘さなんだと思います。でもこれはこれとして一応置いておきましょう。

 もう1つは、立ち上がったハンガリー国民の側が、当時のハンガリーの権力者の善意に結局は期待しているという点です。これは延いては、単なる解放者ではなく覇権主義の立場に立っているソ連に対する認識の甘さにも繋がります。同時に、ソ連ほどやり方が下手ではなくても同じく覇権主義の立場に立っているアメリカへの認識の甘さにも繋がります。

 でも、これも史実ですから仕方がありません。それに、我が日本も、当時同じく解放者として立ち現れたアメリカへの幻想を断ち切れず、比較的上手いやり方で従属させられたままですし。

 kimion20002000さんおっしゃるように、本当は「権力をハンガリーの人民に帰属させようというナショナリズム」の運動でなければならなかったのだと思います。ですが当時のハンガリー国民には、「ハンガリー国民による権力奪取」までは思い及ばなかったのでしょう。

 しかし、当時からもう50年以上経っている現在作られた映画です。制作者の側に、上記のような当時の運動の弱点をリアルに認識している視点があれば、もう少し違った描き方ができたのではないかと思います。

 いや、無い物ねだりのような気もしますし、ちょっと偉そうな感想かなという気もしているのですが、kimion20002000さんのコメントに触発されて、以上のようなことを考えてしまいました。

 これからもよろしくお願いします。

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» mini review 08312「君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956」★★★★★★★☆☆☆ [サーカスな日々]
ソ連の弾圧支配から自由を求める民衆が、武装蜂起した1956年のハンガリー革命を背景に、過酷な運命に翻ろうされるカップルの愛を描く歴史感動大作。祖国のために立ち上がる恋人たちを、ハリウッドでも活躍するハンガリーの若手スター、イヴァン・フェニェーとカタ・ドボーが熱演する。オリンピック史に残る実在の水球チームのエピソードを織り交ぜながら、暴力によって自由を奪われる人々の悲劇を描いた物語は世界中の観客の涙を誘う。[もっと詳しく] ハンガリーの民衆武装闘争は、いまでも僕たちの「抵抗」の原点となる。 この... [続きを読む]

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