映画「青いパパイヤの香り」
トラン・アン・ユン監督。
1951年と1961年のベトナムはサイゴン(現ホーチミン)が舞台。51年にサイゴンの生地商人の家に奉公に来た10歳の少女を主人公にし、少女とその奉公先の家族の生活を描きます。また、61年には商人の家は生活が苦しくなり、主人公はその家の長男の友人で新進作曲家になった資産家のうちに雇われることになり、主人公は少女時代から憧れていたその友人と恋をして結婚します。最後に主人公が以下に引用する詩を朗読して終わります。
春の清水が岩陰から湧き出し
静かに揺らめく
大地の鼓動は大きなうねりとなり
水を揺り動かすが水面は静寂そのもの
調和ある水の戯れのきらめく美しさ
日陰に一本の桜の木
やがて成長して満開の花ざかり
水の旋律に共鳴して見事に咲き誇る
たとえ水がうねり逆巻いても
桜の木はりんとたたずむ
登場する人々の日常のゆったりとした生活と気持ちが描かれ、特に大きな事件が起こってそれがお話の中心となるという訳ではありません。ですから物語の展開を楽しめるような作品ではありません。
ただ、日常が描いてあるとは言っても、この時期ベトナムは、1945年に日本の支配から解放されるも、フランスの再度の侵略に直面します。それは結局失敗させられますが、すぐにアメリカが侵略に乗り出します。そのことが、物語の背後にときどき流れる飛行機の爆音や、外出禁止令などで描き込まれています。とてもささやかな描き方ですが、そういったものが日常とは無関係なものとして捨象されていないと理解しました。従って、日常に奥行きとリアリティを与えていると思いました。
結局、人を始めとする様々な生き物の生きることを愛おしむ気持ちが全編に表れているような気がします。生きることを愛おしむ気持ちを描いた一種の映像による詩のように思えました。台詞は少なく、映像は美しい。とても印象に残るものになっていて、監督の才能を感じさせました。
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