映画「サラ・ムーンのミシシッピー・ワン」
サラ・ムーン監督。
精神病を患い、離婚しまた両親も亡くして孤独になり、人生に希望を失った男が、何も知らない8歳の娘を誘拐するという形で心の交流を得、人生に線香花火のような一瞬の喜び・輝きを得るが、精根尽きてピストル自殺をする話です。
モノクロで撮りセピア色に色付けられたという映像、人物の表情や行動のみならず、その周囲の情景を独特の角度や独特の光と影の具合を持たせて撮った映像が、とても大きな役割を果たしている作品です。
この独特の映像そのものがテーマだと言っても過言ではないでしょう。
多くのカットが、いきなり人物に焦点を当てるのでなく、まず周囲の何と言うこともない情景から入ります。そして人物を映し、説明的にならない程度の台詞をしゃべらせた上で、また別の周囲の情景を映します。この前後の情景が丹念に撮られており、またモノクロであるが故に光と影の具合を効果的に作り出し使用していて、説明や台詞以上のものを伝えてきます。映像による詩です。この作品の最大の魅力だと思います。サラ・ムーンのサラ・ムーンたる所以なのでしょう。
話の展開は以下の通りです。
まず、少女が、テレビのコマーシャル撮りの準備か何かなのでしょう、登場して、自分は8歳で、アレクサンドラ・ウルフと言い、母親はリンダ・メイという歌手で、父親は生まれる前に死んだと自己紹介します。
続いて、少女は回転木馬に1人で乗っており、男が登場してもう1回乗れとお金を渡します。
次に、少女はうちにいて、母親から今夜は帰れないという電話を受けます。男が外の道路にいます。
その明くる日、男は、登下校の最中の少女を強引に誘拐し、車の中で少女がリンダという母親の名前を出すと突然逆上します。ここでこの男が少女の父親で母親から離婚されたんだろうと示唆されます。
さらに、税関を通過するときに見せたパスポートから(ベルギーにでも入ったのでしょうか)、男の名前がデヴィッド・ウルフだと分かり、少女と同じ名字であることから、父親であることがより強く示唆されます。
翌朝、男は嫌がる少女の髪を無理矢理(たぶん)黒く染め短く切ります。これは周りの目から隠すため見た目を変え、また(たぶん)自分と同じ黒髪にして他人の目を欺こうとしたということなのでしょうか。男はその少女を見て自分のおばあちゃんに似ていると言います。
こうして男は少女を連れ回し始めるのですが、少女が男に信頼を寄せるはずもなく、世話を焼こうとする男を断り続けます。
しかし、ある日夜中に目を覚ました少女は、横にいるはずの男がいないことに気付き、男を捜し回ります。これをきっかけに男に頼らざるを得ないことに気付いた少女は、積極的に男に語り掛け、男の素性を聞き出そうとし始めます。
さらには、行く先で出会った同い年くらいの別の少女が男を変人扱いするのを聞いて、反発し男をかばうようになります。
こうして少女は男に打ち解けて行きます。男もそんな少女に孤独な心を癒され解放されていきます。ある日少女はいたずら心から身を隠しますが、男はそれに逆上して強い怒りを少女にぶつけます。男にとって少女はなくてはならないものになっていたのでしょう。
その後、2人は湖でドイツ人の若い女性に出会い、男と女性は仲良くなりますが、少女はそれに嫉妬して、注目を惹くべく自らを剃刀で傷付けます。少女にとっても男はなくてはならないものになっていたのでしょう。
しかし、それを見た男は、自分では面倒が見きれないと思い、少女を列車に乗せて母親の下に返そうとします。少女はそれを嫌がり、結局また男に付いて行きます。
ところがその後行った所で、男の車が故障して動かなくなってしまいます。周りに修理を頼めるような所はなく、路上に放置して宿を取らざるを得ません。宿に入ってる間に車は何者かに壊されてしまいます。男が持っていた(たぶん)精神病の治療薬も切れてしまいます。男はだんだん弱ってきます。少女と共に宿でゲームをしたりして過ごすのですが、少女がそれに飽きて出掛けた隙に、自分は壊された車に戻ってそこに隠してあったピストルで自殺します。
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これはいい映画でしたね。
大好きな映画です。
観たのは92~3年でしょうか。
今もVHSで残してあります。
投稿: Khattab | 2016年8月 4日 (木) 17時18分