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2008年3月17日 (月)

映画「偶然」

 クシシュトフ・キェシロフスキ監督。1981年に123分の作品として制作されたものの、当局から上映禁止とされ、1987年1月に119分にカットされてようやく公開が許された作品だそうです。

 とても興味深い作品でした。

 主人公ヴィテクは、第1話で本人が語るところによれば、1956年6月のポズナニ暴動のさなか生まれます。一緒に生まれようとした弟は死産、母親はそのまま死去。ヴィテクの目には、このとき病院に運び込まれるポズナニ暴動での怪我人・死者の姿が焼き付きます。

 また、第2話での本人の語りによれば、曾祖父が当時のポーランドの支配者ロシアに対する1863年の1月蜂起に参加、祖父は1920~21年のポーランド・ソビエト戦争でビウスツキと共に戦う、父親は1939年のナチス・ドイツの侵略と戦い、1956年のポズナニ暴動に参加、という設定になっています。

 ヴィテクはその後、父親1人の手で育てられます。父親はポズナニ暴動が弾圧されて考えるところがあったのでしょう、息子を医者にしようと懸命に育て、息子も優等生としてそれに応えていきます。しかし、後に医学生となった息子に、息子が優等生であるのは嫌いだったと語り、一番嬉しかったのは息子が教師を殴ったときだと語ります。たぶん1977年の設定ではないかと思いますが、その父親は、もう医者にならなくていいと言い残して死にます。

 父親の望み通り生きてきた主人公ヴィテクは、これからの人生を迷い始め、大学を休学しワルシャワに向かおうとします。

 列車に乗り遅れそうになるヴィテクは駅に急ぎますが、急ぎすぎて駅の入り口で老婆にぶつかり、老婆は小銭を落とし、その小銭を浮浪者が拾い、それで構内にある立ち飲み屋でビールを注文して飲み始めます。

 ここから話が3つの場合に別れるのですが、第1話では、切符を買ったヴィテクが、その浮浪者の前をうまくすり抜け、列車に間に合い乗れます。第2話では、ヴィテクは浮浪者にぶつかりビールジョッキが落ちて砕けるくらいはね飛ばします。すると、その乱暴さが列車に何とか乗ろうとするヴィテクににも表れていたのでしょう、駅員に危険と見咎められて乗車を止められてしまい、それに抵抗したヴィテクは逮捕され軽犯罪法違反で30日間の保護観察処分・無償での労働奉仕の刑罰を科されます。第3話では、浮浪者とぶつかるもはね飛ばさずよけて通りますが、一瞬浮浪者に阻まれたせいか結局列車に間に合いません。

 こうして想定される3種類の人生をヴィテクは映画の中で歩むこととなります。しかし、その3つの人生のどれにおいても、たぶん1980年7月11日という設定だと思うのですが、その日の同じワルシャワ発の飛行機でパリに向かうということになります。しかし、ここでも乗れたり乗れなかったりという結末になります。1980年7月は、ポーランド中にストライキが広がり、9月の自主管理労組「連帯」の結成へつながっていくという時期です。

 想定された3つの人生のどれもで、ヴィテクはその良心に従い誠実に生きようとします。しかし、それがそのまま報われことはありません。裏切られたり、誤解されたり、また残酷な運命に巻き込まれたりします。希望を失ってしまう訳ではないが、決して展望の見える訳ではない人生が描かれます。キェシロフスキ監督が、様々な人生を冷静にしっかりと見つめ、人生とは何なのかを真剣に考え、一歩一歩深めて行っているように見えます。この積み重ねが「ふたりのベロニカ」や「トリコロール」につながっているように思えます。

 第1話では、年老いたポーランド統一労働者党員ヴェルネルが印象的です。彼は、ソ連の強力な干渉の中、1949年以降のポーランド統一労働者党内で、モスクワ亡命派が戦争中国内で戦った党員を民族主義的偏向と批判して追放していく過程で、言われなき罪を着せられ逮捕・投獄、拷問された経験を持ちます。同じく逮捕・投獄・拷問を受けた党員アダムが要領よく立ち回り、出獄後党の中で出世していったことが示唆されます。ヴェルネルはそれに不満を持ちながらも自らは抵抗せず流れに身を任す人並みな生き方を選び、後を継ぐ者によって党や政治が変えられていくことを望んでいると言います。

 第2話では、1968年3月のユダヤ人排斥運動の中でだと思いますが、デンマークへ移住した同級生ダニエルの姉で、移住しなかったヴェルカが印象的です。またヴィテクの伯母も印象的で、彼女は戦争中の共産主義者の戦いを経験して共産主義者に深い信頼を寄せています。ユダヤ人にはすばらしい共産主義者がたくさんいたと語ります。

 第3話では、学部長の人生にも興味深いものがありますが、あれは何と言うのでしょうか、2人でボールをお手玉のように延々と遣り取りする練習の場面が妙に印象に残ります。

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