憲法を勉強すべきは橋下徹氏(補充)
大阪府知事に当選した橋下徹氏が、岩国市長選に関わり、2006年3月12日に行われた岩国基地への空母艦載機部隊移転の是非を問う岩国市の住民投票を憲法に反すると述べて物議を醸しています。
橋下氏は、客観性・論理性を無視した筋違いの発言により有害・迷惑な行為を繰り返してきた札付きの人物ですが、今度は井原勝介前市長に対し「憲法論を勉強されていない」「もう少し憲法を勉強していただきたい」などと大層思い上がった態度です。
日本国憲法が間接民主制(代表民主制)を取り、従って住民投票が万能・全能でないことは当たり前のことです。岩国市民も井原氏も誰もそんな主張はしていません。上記岩国市住民投票は間接民主制(代表民主制)を前提にそれに相応しい形で行われたものでした。従って、間接民主制(代表民主制)を根拠に上記岩国市住民投票を憲法に反するなどと言うことは論理的に不可能です。にもかかわらず間接民主制(代表民主制)を主張の根拠に持ち出すことは、論点をずらすことでしかありません。
結局、真の論点は、彼の「国の防衛政策に地方自治体が異議を差し挟むべきでない」との主張の是非に尽きます。
しかし、国民の意思が国の政治を決定し(国民主権)、国民の人権を守ることが憲法の中核である以上、国の防衛政策によって人権が侵害されようとしている国民がそれに異議を述べ、またその意思に基づいて地方政治の運営を為すべき地方自治体が同様に異議を述べるのは当たり前のことであり、地方自治体としてはむしろその為すべき職務というべきです。地方自治体の職務を為せばそれは憲法に反するなどという珍論・愚論を、声高・居丈高に語る人物を地方自治体の首長に選んだ大阪府民の不幸に同情を禁じ得ません。
憲法を勉強すべきは橋下徹氏であり、このような言辞を弄する人物は弁護士資格が剥奪されて当然と言うべきでしょう。
3日付の朝日電子版に数人の学者さんのコメントが掲載されていますね。奥平康弘さんのコメントが、この記事を書いた自分の気持ちとピッタリ重なるので特に引用しておきます。朝日記事全文は最後に引用しておきます。
「法的拘束力のない住民投票の是非について、わざわざ憲法を引き合いに出すこと自体が論外」
「弁護士が『憲法』と言えば、いかにも説得力があるように聞こえるが、政治家として政治的な発言をしたまでのこと。人びとの注目を集め、目的は達成したんじゃないのかな」
橋下節に疑問の声「あんたこそ憲法学べ」 岩国住民投票
(朝日電子版 2008年02月03日11時38分)米空母艦載機移転をめぐり06年春に山口県岩国市が実施した住民投票に対する橋下徹・次期大阪府知事の発言に、憲法学者や政治学者らが首をかしげている。弁護士でもある橋下氏は、反論した前岩国市長の井原勝介氏を「憲法を勉強して」と痛烈に批判したが、「橋下さんこそ不勉強では」との指摘も出ている。
橋下氏の発言が飛び出したのは1月31日。3日告示の岩国市長選で艦載機移転容認派が推す前自民党衆院議員の福田良彦氏を応援するビデオ撮影に応じた後、「防衛政策に自治体が異議を差し挟むべきではない」「間接代表制をとる日本の法制度上、直接民主制の住民投票の対象には制限がある」と持論を展開。井原氏が「国民が国政にものを言うのは当然」と反論すると、1日に「憲法を全く勉強していない」などと再反論した。
橋下氏の発言に対し、小林良彰・慶大教授(政治学)は「この種の住民投票には法的拘束力がない。住民の意思の確認・表明なのだから、それを憲法が制限することはあり得ない」と指摘。「防衛は国の専権事項だが、基地問題は地元住民にとって生活問題だから、意見を言う資格がある。それは憲法が認めた言論の自由だ」と述べ、「橋下さんこそ憲法を勉強した方がいいんじゃないか」と皮肉った。
小林節・慶大教授(憲法)は「橋下さんは憲法を紋切り型に解釈しているのではないか」と首をひねる。「地域の問題について住民の声を直接聞いて、その結果を地方自治体の意向として国に示して実現を図っていい、というのが憲法の考え方だ」と言う。
奥平康弘・東大名誉教授(憲法)は「法的拘束力のない住民投票の是非について、わざわざ憲法を引き合いに出すこと自体が論外」と突き放した。「弁護士が『憲法』と言えば、いかにも説得力があるように聞こえるが、政治家として政治的な発言をしたまでのこと。人びとの注目を集め、目的は達成したんじゃないのかな」と冷ややかに語った。
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国の防衛政策に地方自治体が異議を差し挟むべきでない
岩国の人たちが住民投票をやることには反対(過去に発言)
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どもです、橋下氏の例の発言に関して色々と調べているものです。
まずエントリー内容に同感です。間接民主制・住民投票など基礎法学の基本的な理解すら間違えている橋下は、サラ金の弁護士にはなれても、府知事として憲法を語る資格はないでしょう。
「間接民主制なのだから、住民投票の範囲はしぼられるべき」などとは、そもそも間接民主制と住民投票は全く別のカテゴリーにあることを理解していない証左ですね。ほとんどネトウヨの発言に近いものを感じます。
まあ単に勉強不足なのか、それとも意図的にカテゴリーミステイクをしているのかはさておき、どちらにせよ余りに民主主義的でない人物が、民主主義国家の知事になってしまったことに懸念を感じます。
ではお邪魔でした、がんばってください。
投稿: monyu | 2008年2月 4日 (月) 06時52分
monyuさん、初めまして。
橋下氏の発言は、政治的意図を持って勉強不足の頭で考えたらああなった、というものでしょうね。因縁を付けて他人を脅迫・恐喝する犯罪者と同じもので、反社会的で、有害なものです。
投稿: saru | 2008年2月 4日 (月) 13時07分