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2008年1月12日 (土)

沖縄戦自決「軍強制」問題、またもや文科省・調査官の独断!

 沖縄戦での「集団自決」は「日本軍の強制」によるものであることを認めなかった文科省ですが(2007年12月26日の記事参照)、その際、教科用図書検定調査審議会は「基本的とらえ方」という指針を示しました(同12月8日の記事同12月28日の記事参照)。

 しかし、より仔細に見ると、教科書会社の訂正申請の認否に当たって主導したのは、審議会の「基本的とらえ方」というよりも、またもや文科省・教科書調査官の照沼康孝氏と村瀬信一氏だったそうです。国家権力を利用して、自己の特殊なイデオロギーにより事実をねじ曲げるような者は、懲戒免職処分にでもするのが相応しい。

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 この点を伝えるしんぶん赤旗日曜版の記事を引用しておきます。同じ記者による以前の日曜版の記事は2007年11月6日の記事を参照してください。

2008年1月13日(日)「しんぶん赤旗 日曜版」

調査官 密室の独断
沖縄戦「集団自決」
軍の強制 またも認めず
教科書検定の裏を追う

20080113kyokashoteiseishinsei  高校日本史教科書の沖縄戦「集団自決」の記述をめぐり、日本軍の「強制」という記述が、出版各社が求めた「訂正申請」でも認められませんでした。追跡取材で浮かんだのは、またも文部科学省教科書調査官の独断でした。(前田泰孝記者)

 訂正申請は誤字脱字や記述の改善のために、出版社が書き直しを文科省に申請できる制度です。

 軍の「強制」を削除した2006年度検定意見に抗議し、その撤回を求める11万6千人の沖縄県民大会におされ、文科省が対応を迫られたのです。

 ところが年末に同省が公表した結論は検定意見は撤回せず、訂正申請でも日本軍による「強制」「強要」などの表現は認めませんでした。

 なぜなのか―。

 06年度検定では、教科書調査官が「誤解を生むおそれがある」という「検定意見」を振りかざし、口頭で「隊長命令が確認できないから軍命令は確認できない」と出版社側に指示し、「命令」「強制」などの表現が削られました。

 今回の訂正申請では、教科用図書検定調査審議会(検定審、学者などで構成)が、「基本的とらえ方」なる指針を決め、各出版社に口頭で伝えた(12月4日)後、文書化したものを公表しました。

 そこでも軍の命令・強制の問題に関して示したのは、隊長命令のような住民への直接的な軍の命令を示す根拠は「現時点では確認できていない」ということだけ。

 日本軍全体としての住民への「強制」は、否定も肯定も示しませんでした。検定審が決めたのはここまでです。

 「隊長命令」の有無と強制・強要の有無とは別問題で、日本軍による強制・強要を否定する根拠にはなりません。

 この「基本的とらえ方」を踏まえて、出版社とのやりとりは教科書調査官に任されました。その舞台は"密室"です。

 実教出版の場合、「日本軍は、住民に手榴弾(しゅりゅうだん)をくばって集団自害と殺しあいを強制した」という当初の訂正申請文が認められず、複数回、文案を教科書調査官とやりとりしています。

 執筆者の石山久男さんによると、教科書調査官は「日本軍が…強制した」のように二つの言葉が同一文でつながることはだめだ、とする趣旨の説明をしました。

 最終的に、「強制」が「日本軍」という主語から切り離される形で決着しました。

 他社も「強要」→「関与」、「強制」→「関与」と書き直したり、「日本軍によって集団自決に追い込まれたり」という一文が「日本軍」と「追い込まれたり」とに分割されたりしました。

 検定審日本史小委員会メンバーで筑波大副学長、波多野澄雄さんは「軍命令については『確認できていない』で合意が得られたが、強制について、一定の方向性で合意をした覚えはない」と証言します。

 別の日本史小委メンバーも「『日本軍』が『強制した』と結びつけてはいけないとか、そんな細かいことまで確認していない」といいます。

 文科省事務当局も「各社の訂正申請文の文脈ごとに『とらえ方』に沿って判断する」との見解でした。

 ではだれが、文脈ごとに判断するのか。出版社との折衝を任された教科書調査官であることは明らかです。

 「検定意見」が撤回されないなかで、「基本的とらえ方」を超えて、教科書調査官が判断したという経過です。

 担当した調査官は照沼康孝氏と村瀬信一氏。ともに日本の戦争は正しかったと主張する「新しい歴史教科書をつくる会」人脈の伊藤隆・東大名誉教授の教え子です。

 照沼氏は、伊藤氏の紹介で調査官になったことを、伊藤氏自ら本紙に認めています。

 調査官の偏った人選と縁故採用への疑惑は深まるばかり。教科書検定制度の見直しが求められています。

私は手榴弾を渡された
沖縄県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長

 私自身、日本軍に「貴様ら、これを使え」と手榴弾を2つ渡されています。これを使って死ねという意味です。

 文科省は、住民の証言は軍命令の根拠にはならないといっています。ここに生き証人がいるのに証拠がないというなら、何をもって証拠といえるのか。納得できません。

撤回しかない検定意見
東京書籍版教科書を執筆した坂本昇さん

 「軍から命令が出たとの知らせがあり…」と、「集団自決」体験者の証言を書いたところ、調査官は「伝聞であっても(軍命が)確定した事実と受け取られる恐れがある」と認めませんでした。

 軍の強制性も「追い込まれた」はいいが、「強制」はダメだという立場です。

 訂正申請でも、軍の命令・強制は認めないという文科省の立場は変わっていません。やはり間違った検定意見は撤回以外にありません。

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