バリ会議採択の「数値目標とその義務化」、「国連主軸の交渉」のロードマップを前進させたい
昨年12月3-15日に開催されたバリ会議では、ヨーロッパ諸国と発展途上国の努力により、アメリカ、日本、カナダの妨害を排して、IPCC報告で確認された数値目標を達成する義務が確認されました(1月5日の記事参照)。
ところが、アメリカはこの義務を骨抜きにしようと、アメリカ主導の主要国間交渉を重ねて自国に有利な合意への道筋をつけようとしています。バリ会議を含む従来の経過を見ていると、日本もこの流れに加担しかねません。
日本と世界の世論の力で、バリ会議での前進をさらに具体的に現実のものとしていきたいものです。バリ会議の成果を踏まえて、さらにこれを具体化するか否かが、地球温暖化問題での今の瞬間での核心的論点です。
今朝のしんぶん赤旗に掲載された坂口明さんの論説を引用しておきます。
2008年1月10日(木)「しんぶん赤旗」
昨年十二月にインドネシア・バリ島で開かれた気候変動枠組み条約第十三回締約国会議(COP13)は、二〇〇九年を交渉期限として、一三年以降の温室効果ガスの削減目標と対策を検討する行程表を決めました。これは温暖化防止の「地球規模での行動への重要な前進」(四日の党旗びらきでの志位和夫日本共産党委員長あいさつ)でした。(坂口明)
COP13は(1)「すべての先進国」は「排出の抑制および削減に関する数量化された目標を含め、計測・報告・検証可能な各国の適切な緩和の約束・行動」をする(2)京都議定書で削減義務を負わない発展途上国も「技術支援され、財政措置と能力構築により可能にされた、持続可能な開発の文脈で、計測・報告・検証可能な緩和の行動」をとる―などを確認しました。
(1)の「排出の抑制および削減に関する数量化された目標」という表現は、京都議定書第三条の同様の規定を踏まえたもの。先進国が数値目標をもって削減する議定書の方式が、一三年以降の新対策の検討対象に含まれていることを意味します。
温室ガス削減
数値目標は消えずバリ会議の決定は、多数決ではなく各国の総意によるコンセンサス方式でした。COP13の合意文書で削減数値目標への言及に米国が反対し、日本などが同調したため、「二〇年に先進国が九〇年比で25―40%削減する」との数値目標が書き込まれない「残念な結果」(志位委員長あいさつ)となりました。
しかし会議の合意文書から、この数値目標が消えたわけではありません。COP13の合意文書は、「深い削減」の必要や、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告に示されたような問題対処の「緊急性」を強調。IPCC報告の関連部分のページ数を脚注で掲げています。そこで指定されたページは、温室効果ガス排出量をCO2換算で四五〇ppmに抑えるには「先進国が九〇年比で25―40%削減」する必要があることを表で示しています。
またバリで同時に開かれた京都議定書第三回締約国会合(COP/MOP3)の採択文書では「二〇年に先進国が九〇年比で25―40%削減する」必要が合意されました。
バリ会議が米国の思惑通りになったわけでないことは、会議の決定への米国の態度表明に示されています。米国務省が昨年十二月十五日に発表した声明は、「気候変動問題は先進国だけでは適切に対処できない」「発展途上国は、その経済規模などに応じて明確に区別して、責任を負うべきだ」などと述べ、バリ会議の決定に「深刻な懸念」を表明しました。
同時に、これは、最大の排出国・米国の責任を棚上げすることが途上国の参加の阻害要因となることを承知の上で、中国などの排出量増加を口実に自国の責任を回避する立場に固執する宣言といえます。
09年への大争点
目標義務化の継承バリでの議論でも明らかなように、今後の交渉では、京都議定書のように先進国が削減数値目標を義務化する方式を継承・発展させるのか、日米両政府が主張する「各国の自主性任せ」=義務化放棄の道をとるのかが、大きな争点になります。
この点で注意すべきなのが米国の動きです。米国のグレイEU(欧州連合)大使は昨年十二月十八日の記者会見で、オゾン層保護に関するモントリオール議定書の交渉のときのように、今回も米国主導の主要国間交渉を重ね、自国に有利な合意への道筋をつける考えを明らかにしました。
米国は一月末にハワイで二度目の米政府主催の主要排出国会議を開くのをはじめ、頻繁にこの種の会合をもち、有力国間で既成事実を積み重ねようとしています。温暖化問題が主要議題になる七月の洞爺湖・主要国サミットが「空洞化」される可能性もあります。
米主導の協議が新対策の交渉の正当性を傷つけるなら、逆効果です。合意の公平性を確保するため、〇九年までの交渉はあくまで国連が主軸になるよう、日本も含め、努力する必要があります。
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