沖縄戦「集団自決」、教科書の訂正申請が始まる
2007年11月2日(金)「しんぶん赤旗」
沖縄戦「集団自決」の記述
2社が初の訂正申請来春から使用される高校日本史の教科書検定で、沖縄戦の「集団自決」に日本軍の強制があったとする記述が削除された問題で、記述を削除して合格した教科書会社五社のうち二社が一日、文部科学省に対し、削除部分に関する訂正申請をしました。一連の問題で訂正申請は初めて。
9月の県民大会も加筆
他の教科書会社も、近日中に検定後の記述より強制性を強める表現で申請する予定。文科省は、申請が出そろった段階で教科用図書検定調査審議会を開いて意見を聞き、可否を決定するとしています。
関係者によると、うち一社が申請したのは、日本史Aの教科書。「日本軍によって『集団自決』においこまれたり」と記述し、「これを『強制集団死』とよぶことがある」とする注釈を付けました。
さらに、検定意見撤回を求めた九月の沖縄県民大会の説明や、「軍から命令が出たとの知らせがあった」とする沖縄戦生存者の証言も新たに書き加えました。
検定前の記述は「日本軍がスパイ容疑で虐殺した一般住民や、集団で『自決』を強いられたものもあった」としていました。しかし、検定後は「『集団自決』においこまれたり、日本軍がスパイ容疑で虐殺した一般住民もあった」と変更。強制の主体を不明確な表現にし、合格しました。
訂正申請は、検定合格した教科書の記述を修正する手続き。誤植や脱字などのほか「学習上、支障となる記載」がある場合などに発行者が申請し、通常は文科省の承認を得て訂正します。訂正申請について検定審を開くのは初めてです。
検定結果に対しては、沖縄県を中心に検定意見撤回を求める動きが広がりました。当初、修正には応じない構えを示していた文科省は沖縄の県民大会を機に、訂正申請による修正容認に転じましたが、撤回要求には応じていません。
2007年11月2日(金)「しんぶん赤旗」
検定意見の撤回を
全地婦連文科相に要請四十七都道府県の婦人会でつくり、会員約三百五十万人の全国地域婦人団体連絡協議会(全地婦連)の中畔都舎子会長らは一日、沖縄戦での「集団自決」をめぐる教科書検定意見問題で渡海紀三朗文科相に要請しました。
十月十六日に新潟県で開催した全国研究大会で採択した「悲惨な沖縄戦における真実がゆがめられることのないように関係機関に要請していく」との決議を受けたもの。小渡ハル子全地婦連常任理事(沖縄県婦人連合会長)が同行しました。
渡海文科相に対し、中畔会長が要請の趣旨を伝え、小渡常任理事が県民大会で示した県民の思いを訴えました。
小渡常任理事は、本土復帰しながらいまだに基地問題が解決せず、そのうえ県民の命を奪った「集団自決」での軍命否定の教科書検定意見は絶対に受け入れられないと力説。「母親として子どもたちにウソを教えることはできない」と検定意見の撤回と記述の回復を求めました。
渡海文科相は「沖縄県民の気持ちはよくわかる。県民が納得できる回答をしたい」と答えました。
要請行動は、大会で採択された男女共同参画の推進など十項目の決議をもって政府機関や与党幹部に行われたもので、二日は首相官邸などに要請します。
2007年11月2日(金)「しんぶん赤旗」
検定意見の撤回要求堅持
沖縄県議会議長沖縄戦の「集団自決」をめぐる教科書検定問題で、検定意見の撤回を求める県民大会で実行委員長を務めた仲里利信・沖縄県議会議長は一日、教科書会社の訂正申請について「だいぶ進展している感触で、一応良しとすべきだ」と評価。一方では、検定意見撤回の要求は維持する姿勢を示しました。
実行委員会のメンバーは同日、那覇市の県議会庁舎で会合を開催し、検定意見撤回と削除された記述の復活を求めていくことを改めて確認。政府に沖縄戦に関する首相談話などの発表を求める意見も出されました。
仲里議長は会合で「われわれは県民の負託を受けている。そんなに楽観を許すものではないと思う」と述べました。
2007年11月3日(土)「しんぶん赤旗」
沖縄戦の「集団自決」
軍の強制明確に
教科書執筆者訂正原案を公表沖縄戦の「集団自決」についての高校日本史教科書の記述から、文部科学省が日本軍の強制を削除した間題で、二日までに教科書会社四社が軍の強制を明確にする表現で訂正申請をしました。残る一社も近く申請する予定ですが、うち一社の執筆者が二日記者会見し、訂正原案の内容を明らかにしました。
原案は同社が発行する二種類の教科書について、十月上旬に執筆者の会議で合意したものだといいます。
うち一種の教科書は、検定前の申請本では「日本軍は、県民を壕(ごう)から追い出し、スパイ容疑で殺害し、日本軍のくばった手榴(しゅりゅう)弾で集団自害と殺しあいをさせ…」となっていましたが、検定後「日本軍は、県民を壕から追い出したり、スパイ容疑で殺害したりした。また、日本軍のくばった手榴弾で集団自害と殺しあいがおこった」と変えられました。
執筆者の訂正原案は「日本軍は、県民を壕から追い出したり、スパイ容疑で殺害したりした。また、日本軍のくばった手榴弾で集団自害と殺し合いを強制した」としています。
執筆者は強制性をより明確にした根拠として、「集団自決」の軍命などについて新たな証言が出たことを指摘しました。
もう一種の教科書の訂正原案も「日本軍により…県民が集団自決に追いやられ」と、軍の強制を明確に記しています。
教科書会社の申請がこの案の通りかどうかは不明です。
会見で執筆者は「高校生の手に渡る前に修正したいと模索してきた。検定意見の撤回が本筋だという考えは変わっていないが、タイムリミットもあり、一つの方法として訂正申請に踏み切った」とのべました。また、「文科省は訂正申請の内容公開を禁じているが、本来は国民に知る権利がある。検定が密室で行われていることが今回のように不正常な検定意見がまかり通る根源の一つになっている。そこに風穴をあける意味もあって、しばりがあるなかでも可能な方法で説明することにした」と語りました。
2007年11月3日(土)「しんぶん赤旗」
検定審に審査要請
文科省沖縄戦の「集団自決」をめぐる高校日本史の教科書検定問題で、教科書会社から日本軍の強制を削除した部分を修正する訂正申請が出たことを受け、文部科学省は二日、教科用図書検定調査審議会に審査を要請しました。同省によると、訂正申請を理由とした審議会開催は初めて。
日程などは今後、調整します。渡海紀三朗文部科学相名の要請文では「専門的・学術的見地から調査審議の上、意見をいただきたい」としています。沖縄戦の専門家からの意見聴取などについても検討されるとみられます。
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