世論と運動が政治を動かしつつある―沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題
「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の実行委員会らでつくる要請団は15、16日と2日に渡り、官邸や文部科学省、政党、教科書会社担当者らを訪れ、検定意見撤回と記述回復を求めて要請行動を繰り広げました。
この国民の運動とそれを支える世論は、現実に政治を動かし始めています。
この事実を客観的に直視し現実的に平和を構築していこうという国民の努力に対しては、日本の侵略戦争を正しい戦争だと言い張り、この根拠なき主張を日本国民に強制しようとしている政府や国会内の勢力が、自分たちの有する政治権力を利用して、この特殊なイデオロギーの日本国民への強制という目標を達成しようと躍起になっています。
まず、16日、池坊保子・文科省副大臣が要請団に対し、「(県民の)皆さんが非常な痛みを感じたことを、私どもは反省しなければいけないと思っている」と初めて「反省」を口にし、17日には参院予算委員会で山内徳信・参院議員(社民)の質問に答えて渡海紀三朗文科相も「(県民に)疑義が生じたことは、われわれも反省しなければいけない」と「反省」を口にしました。
また、小沢一郎・民主党代表も「沖縄戦『集団自決(強制集団死)』の教科書検定に関する決議案」提出に関連して、これまでの静観との態度を改め、「歴史をねじ曲げる検定だということで党内で一致している。闘っていく。党内をしっかりまとめるように」と党内結束を指示したと、同党の川内博史衆院議員によって伝えられました。
さらに、要請団は16日、今回の記述削除の対象となった5社に、記述の完全復活や表現を強めるよう直接要請し、17日にはこのうち4社と教科書執筆者約25人が会合を開き、(1)「日本軍による」という主語の明記(2)日本軍の強制の明確化(3)添付資料の活用で「集団自決」体験者の新証言を記載―などの原則に基づいて訂正申請する方針を確認しました。
同時に、4社の申請が出そろった段階で各社の記述内容を公表することや、執筆者の声明を発表する方向で調整することも決め、この会合に欠席した山川出版にも働き掛けることになったそうです。
執筆者の1人である歴史教育者協議会の石山久男委員長(実教出版執筆者)は「国民にオープンにすることで、記述内容を文部科学省に認めさせたい」と指摘し、声明については「文部科学省が(表現を弱めるなど)曖昧な決着を図る方向に訂正申請が利用されないよう、検定意見の撤回が本筋という県民の考えに配慮しつつ、執筆者の考えを発表する」と説明したそうです。
他方、文科省は検定意見の撤回については頑なに拒み、また17日には、教科書会社が文部科学省に訂正申請をする際の記述内容について、同省が申請に対する結果をまとめるまで、記述内容を公表しないよう教科書会社に指示しました。
さらに、自民党の有志でつくる「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(会長・中山成彬元文部科学相)は、17日、これまで通り教科書検定制度を堅持すべきだとの方針を確認し、近く、首相官邸や文科省に申し入れることにしたそうです。同時に、「沖縄戦について知られていない部分が多い」(中山氏)と主張し、会独自に沖縄戦を研究する小委員会を設けて史実を掘り起こすことも決めたそうです。
以下、報道を引用しておきます。
2007年10月17日(水)「しんぶん赤旗」
「集団自決」教科書問題
沖縄代表団に志位委員長
“本土と沖縄の連帯で検定意見の撤回を”沖縄戦「集団自決」検定意見の撤回、記述回復を求め、9・29沖縄県民大会実行委員会の代表が十六日、国会を訪れ、日本共産党の志位和夫委員長に要請書を手渡し、懇談しました。この日、代表団は手分けして各政党代表をはじめ、全国会議員への要請をおこないました。志位氏との懇談には、伊波常洋県議(自民)や島袋宗康元参院議員ら十一人が参加。日本共産党からは石井郁子、穀田恵二、赤嶺政賢の各衆院議員、仁比聡平参院議員が同席しました。
志位氏は冒頭、「教科書検定問題での沖縄県民の島ぐるみのたたかいに心から敬意を表したい」とあいさつしました。
政府が「県民の声を重く受け止める」としながら、検定意見の撤回は「政治的介入になる」と回避していることが一番の問題と指摘。一方で、赤嶺議員の予算委員会(十一日)の質問の中で、教科書検定に最初に“不当な政治的介入”をおこなったのが文科省の教科書調査官の意見書であったことが明白になった、と強調しました。
志位氏は、検定意見が文科省の教科書調査官の個人の見解で出され、教科書審議会でまともな議論もなしにまとめられたことを指摘し、「超党派の沖縄県民の要求は政府の不当な介入を取り消し、歴史的事実に直せ、という至極まっとうなもの」と激励しました。
代表団メンバーの県老人クラブ連合会の知花徳盛事務局長は、沖縄戦当時、二歳半の妹の泣き声がうるさいと、壕(ごう)の外に出るようにいわれ、家族で壕を出た後に祖父を艦砲射撃で亡くした自身の体験を語りながら、検定意見の撤回を求めました。
県遺族連合会の仲宗根義尚会長も、沖縄戦当時十歳だった体験を交えながら、「二十一世紀をつくる高校生に沖縄戦の悲惨さをありのままに伝えたい。歴史的事実を伝えて平和を希求する運動につなげたい」と思いを語りました。
また、沖縄弁護士会の新垣剛会長は「(日本共産党は)検定意見をつきつけて記述を修正したこと自体が政治的介入だとおっしゃっておられた。政治的な介入自体を取り消していただく、そういう方針でやっていただきたい」と訴えました。
最後に志位氏は、教科書問題では「内に対しては沖縄戦の記述問題があり、外に対しては『従軍慰安婦』の問題がある」と指摘。「いずれも戦争を美化するという点では一つの流れのなかの出来事」だとして、「本土と沖縄が連帯して歴史のわい曲を許さないためがんばりたい」と強調しました。
志位氏は懇談が終わった後も、「この問題では私たちの間に垣根はありません」と述べ、代表団を激励しました。
検定撤回なお「壁」/真実継承へ正念場(沖縄タイムス 2007.10.17)
【東京】県民大会実行委員会幹事の平良長政県議ら要請団代表七人は十六日、来年春から使われる高校歴史教科書で文部科学省の検定意見が付き、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」から日本軍強制を示す記述を削除した教科書会社五社に対し、記述の完全復活や表現を強めるよう求めた。教科書会社の編集責任者らは「県民の思いは受け止めた。執筆者と話し合った上で慎重に検討していきたい」などと答えた。教科書会社に直接要請をするのは今回が初めて。
都内の教科書協会で開かれた要請には、東京書籍、実教出版、清水書院、三省堂、山川出版の編集責任者と担当者ら九人が出席。県PTA連合会の諸見里宏美会長が、本紙のオピニオン面に高校生が寄せた「私は絶対に、うその書かれた教科書を使いたくありません」の投稿のコピーを配布。「子どもたちは本当のことを知りたいと考えている。事実を教え、伝える教科書には真実を載せてほしい」と訴えた。
高嶋伸欣琉球大教授は「文科省は教科書会社側に責任転嫁し、訂正申請を認めようとしている。訂正は本来は文科省の責任で行うべきだ。われわれも文科省の責任を追及していく」と話し、文科省が検定意見撤回に応じない現状で、教科書会社が訂正申請をすることへの懸念を表明。「沖縄戦をめぐる記述は申請段階のものがベストではない。新たな証言の掘り起こしや研究が急速に進んでいる」とし、記述を強めるよう求めた。
ある会社の担当者は「投稿にはショックを受けた。教科書の真実を訴え、未来を子どもたちとつくっていく役割を認識し、執筆者と十分に相談した上で適切な判断をしていきたい」と話した。一方、各社からは、具体的な記述内容に関しては特に発言はなかった。
各社では、十七日に予定されている執筆者らの懇談会なども踏まえ、訂正申請に向けた具体的な協議を進めている。これまでのところ五社以外に検定意見の付かなかった一社も訂正申請を検討している。
政府姿勢に安堵と不満
【東京】県民大会実行委員会は十六日、二日間の要請行動を終えた。約百七十人の参加者の中には要請を終えた達成感や記述回復に対する政府の前向きな姿勢に安堵感も漂った。一方で、検定意見撤回の回答は得られず、実行委幹部からは「まだ道半ば、これからが正念場だ」とくぎを刺す意見も相次いだ。
十六日午後、文部科学省や首相官邸、各政党幹部、全国会議員などへの要請行動を終えた一行は、都内の衆院第一会館で報告会を開いた。「全国にこの問題を訴えることができた」「感触として前進があった」と話す報告者。拍手も起こったが、副実行委員長で県子ども会育成連絡協議会の玉寄哲永会長は「前進はあったかもしれないが大きな変化はなかった。文科省がなぜ検定意見を付け、日本軍強制の記述を削除したのかはっきりさせるべきだ」と訴える。さらに「検定意見撤回は達成できていない。今が正念場だ」と話した。
県PTA連合会の諸見里宏美会長は「トップが対応しなかったので当たり障りのない発言だった」と実行委が当初求めていた福田康夫首相や渡海紀三朗文科相への要請が実現しなかったことに不満を表明した。「検定意見が撤回されないままでは十年後に再び同じ問題が起こる。子どもたちに正しい歴史を伝えるためにも絶対に譲れない」と強調した。
旧制学校同窓会でつくる沖縄の未来を語る会の大浦敬文事務局長は「政府を動かすのは難しいと感じた」と話す。「前向きな発言もリップサービスにしか映らない。検定意見撤回の言質を取られないように対応している。今後も超党派で全県的な運動を継続していく必要がある」と指摘した。
大会決議堅持 強調/解決まで実行委存続(沖縄タイムス 2007.10.17)
「集団自決」検定撤回/仲里委員長「何度でも要請」
【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、十一万人が参加した県民大会実行委員会の約百七十人による要請行動が十六日、終了した。同日夕、東京都内で会見した仲里利信実行委員長(県議会議長)は大会決議で求めている検定意見の撤回と記述の回復を堅持する姿勢を強調。問題解決まで実行委員会を存続させ、実行委員長を務める考えを表明した。
会見後に開かれた集会では実行委メンバーは「一致団結して頑張ろう」と気勢を上げ、引き続き超党派で連帯して取り組む方針を確認した。
仲里委員長は会見で、決議要求について「要求が実現されるまで何回でも政府に対して要請を続けていく」と述べ、粘り強く求めていく考えを示した。
一方、文科省が出版社からの訂正申請で記述の修正を図ろうとしていることに「ずばり(記述を)元に戻してほしい。ちゃんと決着するまでは旧来の教科書でいい。急ぐ必要はない」と述べた。
要請の成果については、「文科省のこれまでのかたくなな姿勢が、やや和らいだという感触を受けた。わずかだが、前回よりは前進だったと受け止めている」と手応えを語った。
ただ、政府・与党から決議要望に関する具体的な回答がなく、実質的な進展が見られなかったことには「ある程度予想していた。この問題が一朝一夕に決着するとは思っていない」と淡々と語り、政府の動向を見守りながら、継続的に取り組む考えを示した。
会見後に開かれた報告集会でも仲里委員長は、「今回の要請で必ずや厚い壁を突破して、私どもの願いが必ず届くものだと思っている」と述べ、連帯を呼び掛けた。
これに対し県内から駆け付けた実行委関係者からは「委員長を中心に頑張っているのは県民の誇り」「最後の最後まで、撤回させる頑張りたい」などの声が相次ぎ、結束を強めていた。
◇ ◇ ◇
党首クラスが対応
【東京】「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の実行委員会らでつくる要請団は十五、十六の両日、官邸や文部科学省、政党、教科書会社担当者らを訪れ、検定意見撤回と記述回復を求めて要請行動を繰り広げた。実行委員会は要請終了後、検定意見の撤回と記述の回復まで、引き続き超党派で取り組むことを確認した。
自民「本道に戻す」
民主など「要請ぜひ実現」【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した高校教科書の検定意見問題で、県民大会実行委員会の要請団は十六日、精力的に関係機関を訪ねた。政党各党は党首クラスが顔をそろえる異例の対応で出迎えた。それぞれの立場で、十一万人を超える県民の声に対する考えを明らかにした。
沖縄担当相の経験もある自民党の細田博之幹事長代理は「皆さんの気持ちを重く受け止め、幹部にしっかり伝える」と切り出した。「これだけの証人があり、証言もある。一刻も早く元に戻さなければいけない。(教科書の記述を)本道に戻したい」と述べたという。
民主党の小沢一郎代表は要請後の会見で、「歴史の事実は事実として、正しく認識した上で考えていかなくてはならない」と理解を示した。その上で「要請内容をぜひ、実現したい」と前向きに取り組む考えを強調した。
与党の公明党は太田昭宏代表や浜四津敏子代表代行らが応対した。太田代表は(1)沖縄戦の「集団自決」は旧日本軍の関与を否定できない(2)沖縄戦の実相を伝えるために真実を調査・研究する機関の立ち上げを検討する―などの立場を説明。
同党が政府に提起している沖縄戦の調査・研究機関設置について「調査・研究は体験者の声を聞くことが一番大事なことだと思う。教科書検定に政治は不介入ということは大事なこと。『集団自決』の事実を表現できるように力を注ぎたい」と述べた。
共産党は志位和夫委員長や国会議員らが出席。志位委員長は検定意見の撤回と軍強制記述の復活を政府の責任で実行するべきだとの考えを強調。「軍の強制なしにあの悲劇は起き得ない。(文部科学省の)検定調査官が勝手に意見を出したことが問題の発端で、『政治介入』したのは文科省である」と指摘した。
国会決議についても触れ、「中途半端な決着ではつらい体験を証言した人たちを否定することになる。国会でも超党派で一致できるよう努めたい」とした。
社民党は福島瑞穂党首や又市征治幹事長らほぼ全議員が顔をそろえた。福島党首は「私も直接、『集団自決』の当事者の方々から話を聞いている。軍の強制を削除することは許し難い。子どもたちにしっかりと歴史を勉強させることが大事だ。党を挙げて取り組みたい」と理解を示した。
衆院会派「国民新党・そうぞう・無所属の会」は、国民新党の綿貫民輔代表や亀井久興幹事長、下地幹郎そうぞう代表が応対した。綿貫代表は「国会の中でもいろんな意見が出ている。中身を検討したい」と発言。
亀井幹事長は「事実は事実として若い世代にしっかりと伝えることが、歴史教育の上で大前提。そこがねじ曲げられていることがあればそれを正していくのは当然だ。与党も野党もない」と述べ、他党とも調整する考えを示した。
また、新党日本の田中康夫代表も要請団と会い、「事実は一つしかない。検定意見の撤回、あるいは記述の回復までわが党も頑張りたい」と述べたという。
国会決議に意欲 民主小沢代表
【東京】民主党の小沢一郎代表は十六日、国会への「沖縄戦『集団自決(強制集団死)』の教科書検定に関する決議案」提出に関連し、党内に結束を図るよう指示した。十一万人が参加した「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の要請団に対しても同日、「(民主党は)皆、同じ認識を持っている」と語り、決議に意欲を示した。(一部地域既報)
検定手続きの見直しなどを求める同決議案提出をめぐっては、自民の執行部から反対意見が相次いでいるほか、民主内からも「全会一致」の慣例を重視して「多数決ではできない」(平田健二参院民主幹事長)との異論が出ており、めどが立たない状況に陥っている。
小沢代表はこれまで、事態を静観する構えを見せていた。しかし、要請に同席した同党の川内博史衆院議員によると、小沢代表は要請団との面会に先立ち、「歴史をねじ曲げる検定だということで党内で一致している。闘っていく。党内をしっかりまとめるように」と党内結束を指示したという。
政府が「反省」言及/検定制見直し 否定的
【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、上京中の県民大会実行委員会要請団は十六日、文部科学省に池坊保子副大臣を訪ね、検定意見の撤回と記述の回復を要望した。池坊副大臣は「(県民の)皆さんが非常な痛みを感じたことを、私どもは反省しなければいけないと思っている」と述べ、今回の検定問題で政府として初めて「反省」に言及した。
一方で「検定制度が悪かったとは思っていない」と述べ、検定制度の見直しには否定的な考えを強調した。
要請には県民大会実行委員会の仲里利信委員長(県議会議長)や県関係国会議員、県高校PTA連合会の西銘生弘会長らが同席した。
仲村正治衆院議員は、沖縄戦で「県民二対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」と海軍次官あてに打電して自決した大田実中将の電文に「『集団自決』を強要した悲劇があった」という部分があったと指摘。「(日本軍の強制は)否定することのできない歴史の事実。教科書の書き換えを撤回してほしい」と訴えた。
要請団は、南部商業高校の生徒九十五人が渡海紀三朗文科相にあてた寄せ書きを手渡した。池坊副大臣は「しっかり大臣に渡したい」と述べた。
実行委 会見要旨
【東京】「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の実行委員会らでつくる要請団の記者会見要旨は次の通り。
仲里利信実行委員長 文科省のこれまでのかたくなな姿勢が、やや和らいだんじゃないかという感触だ。わずかだが、前回よりは前進だったと受け止めている。これまで文科省は責任の所在について一切言及しなかったが、反省すべきことを反省すると、文科省の指導監督責任に触れた。また、各政党の代表者からは異口同音に、われわれの取り組みに対する高い評価と力強い支援の言葉に意を強くした。今後も粘り強く、要求が実現されるまで何回でも政府に要請を続けていく。
平良長政同委幹事 教科書会社は、真実を伝える教科書の社会的責任を十分理解しており、県民の思いをそれぞれの社で話し合い、真実を反映できる教科書にしたいというような決意もあった。
一問一答
―わずかな前進とは。
仲里氏 具体的な結果が出たわけではないが、感触というか、前回と比べ、ある程度の前進があったと思っている。文科省の答弁は前進だととらえている。
―教科書会社の訂正申請を待つ政府の姿勢に変化はないが。
仲里氏 私たちは県民大会で決議した検定意見の撤回と記述の回復という二点は最初から譲れないという共通認識に立っており、その姿勢に変化はない。
―知事は「記述回復」優先と発言しているが。
仲里氏 それは知事のお考え。公式には議会の場で正式に検定意見の撤回と記述の回復を求めることを明言している。それは変わりないものと思っている。知事は政府の立場も念頭におっしゃったとは思う。
―一部政党の言う「談話」が実現し、将来同じようなことが起きないとなれば検定意見を撤回できると考えるか。
仲里氏 その意見は聞いていないが、私たちは現時点では撤回と回復、それを一歩も譲ることができない。
―教科書会社の反応をどう受け止めるか。
仲里氏 教科書会社も財政的な問題もあり、大変だと思うが、それ以上に子どもたちに誤ったこと(を伝え)、文科省に疑いを持たせるようなことをしている。問題が決着するまで旧来の教科書でいいのではないか。急ぐ必要はない。
―今後の活動は。
仲里氏 この問題が一朝一夕に決着するとは思っていないが、国の動向を見守りながら次の行動を皆で考えたい。
「軍強制」明記 申請へ/教科書検定(沖縄タイムス 2007.10.18)
4社執筆者が一致/「軍命」伝聞記述も
【東京】二〇〇六年度の教科書検定で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する記述に検定意見が付された教科書の執筆者による「社会科教科書執筆者懇談会」の第二回会合が十七日、東京都内で開かれた。対象五社のうち出席した四社、約二十五人の執筆者と編集者が訂正申請の準備状況を報告。主語の「日本軍」と軍の強制性を明記した上で、今月末から十一月前半の申請を目指すことで一致した。
このうち二社の執筆者によると、編集責任者との協議で軍強制の明記を会社の判断として決定したという。
出席者は(1)「日本軍による」という主語の明記(2)日本軍の強制の明確化(3)添付資料の活用で「集団自決」体験者の新証言を記載―などの原則に基づいて訂正申請する方針を確認。
ある社の執筆者は「軍命を聞いたという体験談を載せれば、伝聞資料だが、軍命の記述が復活する教科書が出てくるかもしれない」と述べ、軍命が明記される可能性を指摘した。
懇談会では四社の申請が出そろった段階で各社の記述内容を公表することや、執筆者の声明を発表する方向で調整することも決めた。今回の懇談会に欠席した山川出版にも働き掛ける。
歴史教育者協議会の石山久男委員長(実教出版執筆者)は「国民にオープンにすることで、記述内容を文部科学省に認めさせたい」と指摘。
声明については「文部科学省が(表現を弱めるなど)曖昧な決着を図る方向に訂正申請が利用されないよう、検定意見の撤回が本筋という県民の考えに配慮しつつ、執筆者の考えを発表する」と説明した。執筆者は十一月五日に次回会合を開き、訂正申請した会社の記述の内容や、申請していない会社の準備状況などを情報交換する。
◇ ◇ ◇
文科省が不公表指示/訂正申請記述
【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」から日本軍強制の記述を削除した教科書検定問題で、教科書会社が文部科学省に訂正申請をする際の記述内容について、同省が申請に対する結果をまとめるまで、記述内容を公表しないよう教科書会社に指示していることが十七日、分かった。教科書会社関係者が明らかにした。文科省は現在、教科用図書検定調査審議会の審議過程の透明性を高める方向で検討しているが、その実効性が問われそうだ。
教科書会社側が訂正申請の手続きを聞くため十七日に文科省を訪れた際、「記述内容を公表してもいいか」と質問。これに文科省の担当者が答えた。教科書会社によると、担当者は根拠法として教科用図書検定規則の細則を挙げたという。
訂正申請の手続きの説明は各社個別で行われ、十七日は清水書院、実教出版、山川出版の順に行われた。十八日は三省堂、東京書籍に説明をする。
県民に「疑義生じ反省」/渡海文科相「撤回」は否定
【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、渡海紀三朗文部科学相は十七日、「(県民に)疑義が生じたことは、われわれも反省しなければいけない」と述べ、沖縄側の訴えに一定の理解を示した。一方で、今回の検定手続きの正当性も主張し、検定意見の撤回には応じられない考えを重ねて強調した。参議院予算委員会で山内徳信氏(社民)の質問に答えた。
山内氏は県民大会の総意が、検定意見の撤回と記述の回復にあると指摘。渡海文科相は「すでに(教科書会社の)数社から、修正を出すときにはどういう手続きになるのか相談もある。それには真摯に対応し、中身は再度審議会で審議していただく。準備を進めている」と、意見書撤回の可能性を否定した。
文科省の検定調査官主導の検定意見だったとの問いには「検定制度は歴史の反省から民間の教科書会社が提出し、(政治の)介入を行わない制度を築いてきた。今回もその仕組みの中で中立・公正に行われたと報告を受けている」との認識を示した。
また、教科用図書検定調査審議会の透明性確保に向け、「議事録は全面公開していないが、一部を紹介するなど、今後、しっかりやらないといけない。それをやることで職責を果たしたい」と理解を求めた。
福田康夫首相は、在日米軍専用施設の約75%が集中する沖縄の現状認識をただされ、「基地の集中で県民は多くの負担をされ、経済、社会でも厳しい状況がある」とした上で、「地元の切実な声に耳を傾け、地域振興に取り組みを進め、負担の軽減に向けて政府として全力を挙げたい」と述べた。
一方で、「普天間飛行場の移設・返還をはじめとする米軍再編を着実に進めることを通じ、負担軽減に努めたい」とし、名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設合意した計画を進める考えを示した。
「軍強制」を明確化 「集団自決」検定、訂正申請4社方針(琉球新報 2007.10.18)
【東京】沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)における日本軍の強制の記述が文科省の検定で削除・修正された問題で、教科書執筆者や出版社の編集者が対応策を話し合う「社会科教科書執筆者懇談会」の第2回会合が17日夜、東京・千代田区で開かれた。記述を修正した5社のうち4社が「日本軍の強制」の記述復活に向け、訂正申請を準備していることを報告。検定前の記述より「日本軍の強制」の事実をより明確にした内容に改める方向で申請する方針を明らかにした。
懇談会は文科省が「検定意見」を撤回しないまま、出版社の訂正申請に対応した場合、「日本軍の強制」の事実があいまいになる恐れがあるとして、拙速な訂正申請を警戒している。11月5日に第3回会合を開き、検定意見撤回を文科省に求める声明をあらためて発表する方針だ。
17日の懇談会には、執筆者と編集者の約25人が参加。検定意見の付いた5社のうち三省堂、清水書院、実教出版、東京書籍の4社の執筆者が参加した。4社は今月末から11月上旬までに訂正申請する。
懇談会後、歴史教育者協議会の石山久男委員長は「訂正申請を行う4社のうち、申請本の記述より後退した内容で申請をする社はなかった」と説明。「検定内容が決まった4月以降、『集団自決』で新証言もある。そのことも含め、さらに記述の改善もあり得る」と述べた。
教科書執筆者の坂本昇さんは「より良い記述になるよう、基本的に踏み込んで改善を目指す会社が多い」と述べた。軍強制の事実を明確化するような訂正申請の方法について「(体験者の証言の)引用部分を増やすことで、日本軍の強制がより明らかになるようにしようと考えている社もある」と述べ、教科書出版各社で訂正申請の内容を具体的に検討していることを説明した。
「検定意見撤回」に関する声明に関して石山氏は「文科省のあいまいな決着を図る方法に利用されないように、執筆者として考え方を声明として発表することを確認した」と強調した。
2007年10月19日(金)「しんぶん赤旗」
軍強制明記の方針確認
「集団自決」検定問題 教科書執筆者ら懇談沖縄戦「集団自決」の教科書検定問題で、社会科教科書の執筆者らが十七日、第二回懇談会を東京都内で開きました。日本軍の強制を削除した検定意見の撤回という本筋を踏まえつつ、文部科学省への訂正申請をどう行うのかについて意見交換。日本軍の強制について明記する方針を確認しました。
懇談会には、「集団自決」の記述を修正させられた五社のうち、四社の執筆者や編集者ら二十五人が出席しました。九月二十五日の第一回懇談会で、訂正申請に向けて執筆者らが連携していくことを確認し、準備を進めてきましたが、沖縄県民大会後の新たな情勢を受け、改めて最善策をさぐる形となりました。
実教出版の執筆者で歴史教育者協議会委員長の石山久男さんは、訂正申請があれば受けつけるとする文科省の対応は「検定意見の撤回という本来の解決の道筋をうやむやにするもの」だと指摘。「あいまいな政治決着にくみするような形で訂正申請が行われてはならない」とのべました。これを受けて関係者らで議論しました。
懇談会後、石山さんは「沖縄県民の意向は検定意見の撤回が本筋だと強く打ち出している。それに配慮しつつ、状況を見て申請の提出時期を慎重に検討していくことで一致した」とのべました。
また、検定後の出来事として県民大会の開催などの新しい動きや、日本軍の強制を裏付ける新たな証言が出てきたことを訂正申請で加筆することもあり得るとしました。
訂正申請を出すにあたっては誤解が生じないよう、執筆者の考えを声明として発表することも確認しました。申請時期は各社ばらつきはあるものの、今月下旬から十一月上旬に提出する見通しです。
自民有志「教科書検定制度は堅持を」(朝日電子版 2007年10月17日22時10分)
自民党の有志でつくる「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(会長・中山成彬元文部科学相)は17日、沖縄戦で日本軍が住民に集団自決を強制したとの記述が教科書検定で削除された問題に関連して、これまで通り教科書検定制度を堅持すべきだとの方針を確認した。検定結果に対し、介入すべきではないとの考え方に基づくものとみられる。近く、首相官邸や文科省に申し入れる。
同会は「沖縄戦について知られていない部分が多い」(中山氏)と主張し、会独自に沖縄戦を研究する小委員会を設けて史実を掘り起こすことも決めた。
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この記事へのトラックバック一覧です: 世論と運動が政治を動かしつつある―沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題:
» 景気が良くならない−加害者は誰だ! [関係性]
8月はサブプライム問題で外為の異様な変動(輸出入に大きな影響)につき合わされ、昼も夜もネットから自由にならない状況が続き、9月はわが社の決算と「平和省地球会議」への支援で肉体的にも精神的にもかなり追われた状況であった。
しかし、
「平和省プロジェクトJUMP」と関わり、その考え方を周りに語りカンパ金をいただき、これによって運動への支援を若干してきた。「平和省」の運動によってそこに関わる人たちから得られた感動だけではなく、カンパ集めで「平和省」を説明することによって自分のものの見方を整理し、説明... [続きを読む]
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>>、十一万人が参加した県民大会実行委員会
相変わらず11万人の大嘘がまかり通っていますね。
「主催者発表」の断りもないし。
投稿: やすかわ | 2007年10月18日 (木) 14時39分