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2007年10月13日 (土)

文科省職員の「調査意見書」そして「検定意見」という「政治介入」に固執する渡海紀三朗文科相―撤回拒否を明言

 もう一昨日のことになりましたが(11日)、高校教科書から、沖縄戦での「集団自決」に日本軍の強制があったとする記述を削除させた問題で、その削除させた「検定意見」は、教科用図書検定調査審議会の中立・公平な学術的・専門的「審議」に基づくものではなく、文科省職員が文科省ぐるみで作成した「調査意見書」に基づくものであることが、国会の場で改めて明らかにされました。

 にもかかわらず、渡海紀三朗文科相は「(検定意見の撤回は)政治介入になる」との立場に固執し、「検定意見そのものを撤回することにならないのではないか」と述べて、撤回には応じない考えを初めて明言しました。

 当然のことながら沖縄では強烈な怒りの声が上がっています。

 7日に石破茂防衛相が、小沢一郎・民主党代表のISAF参加論に対して「自衛官の命を軽んずるな」とテレビで述べましたが、この政府・文科省の日本軍が「集団自決」を強制した事実を教科書から削除させた行為は、日本人の「命を軽んずる」どころか「愚弄する」ものです。

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 長くなりますが、沖縄タイムスとしんぶん赤旗の記事を引用しておきます。

文科相、撤回拒否を明言/記述修正は示唆(沖縄タイムス 2007.10.12)

 【東京】沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題で、沖縄側から検定意見の撤回要求が出ていることについて、渡海紀三朗文部科学相は「検定意見そのものを撤回することにならないのではないか」と述べ、撤回には応じない考えを初めて明言した。十一日午後の衆院予算委員会で赤嶺政賢氏(共産)の質問に答えた。

 文部科学省の金森越哉初等中等教育局長は、検定意見を決めた教科用図書検定調査審議会のメンバーに沖縄戦の専門家がいたのか問われたのに対し、「沖縄戦を専門に研究している委員はいなかったと承知している。(沖縄戦の記述に)委員から特段の異論はなかった」と述べ、文科省の調査官が提出した意見が、そのまま審議会で了承されたことを認めた。

 一方で、金森局長は「審議会委員は古代から現代までの各分野でバランスよく構成され、学術的・専門的な審議が行われた。政治的・行政的意図が入り込む余地はない」との認識を示した。

 また、調査官が審議会に提出する意見書をまとめる前に、専門家の意見を聞く手続きを踏んだかただされたのに対し、金森局長は「意見は出されていない」と回答。

 赤嶺氏は「学術的・専門的と言いながら、県民の検証には耐えられない意見が撤回されないのはおかしい」と批判した。

 渡海文科相は、教科書会社から訂正申請があった場合の対応について「ルールにのっとり、私が再度承認することが可能だが、その際に政治的介入を許さない意味でも再度、審議会に審議していただく」と述べ、審議会の議論で記述修正がされる可能性をあらためて示した。

「絶対に撤回させる」/「自決」体験者怒り(沖縄タイムス 2007.10.12)

 「要請行動で絶対に撤回させる」「大臣の資質に欠ける」―。検定意見撤回を求める県民の要請に対し、かたくなな姿勢を崩さずに国会答弁をした渡海紀三朗文部科学大臣に対し、十五、十六の両日に上京して検定意見撤回を訴える県民大会実行委員会の関係者や「集団自決(強制集団死)」の研究者や体験者からは怒りの声が上がった。

 県民大会実行委副委員長の玉寄哲永県子ども会育成連絡協議会長は「審議委員をひな壇のお飾りにした上で審議をせずに教科書調査官の検定意見を通していながら、撤回に応じないのは絶対に許せない」と憤る。「国会の場でもうそを突き通すなら誰が文科相でも変わらない。政府の大うそ、不正を撤回まで追及したい」と要請行動に向け、決意を新たにした。

 同じく副委員長の小渡ハル子県婦人連合会長(78)は、「ばかにするにもほどがある。どうしても納得がいかない」と語気を強めた。小渡会長自身は、新潟県で行われる全国地域婦人団体研究大会に出席し、教科書問題で検定意見撤回を求める決議を提起するため要請行動には参加できない。「全国の会員三百五十万人の総意として決議し、総理や大臣に声を届けるようにする。全国に支援を広げていくことも必要」と多方面から声を上げることの重要性を指摘した。

 座間味島での「集団自決」の体験者、宮城恒彦さん(73)は「ただ『撤回できない』と言われても、納得できる県民は誰もいない。過ちを直すだけなのに、なぜ素直に、元通りにできないのか」と反発。「沖縄を見下しているような、差別的なものを感じる。沖縄戦の専門家を審議員に入れるという話も、沖縄だけの問題に封じ込めようとしているようだ」と怒りをあらわにした。「教科書が元通りになるまで、徹底して戦うしかない」と力強く話した。

 「政治介入はできない」とする渡海文科相の姿勢に対し「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」事務局長の山口剛史琉球大准教授は「歴史の事実判断が間違っているのを指摘することがなぜ政治介入にあたるのか」と批判。「行政の長、監督責任者として審議会の運用の間違いを正すことがまったく理解できないのは資質がない証拠だ」と分析した。

仲里県議長が依頼文を送付
44都道府県議会へ

 高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」をめぐる日本軍強制の記述が削除された問題で、「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員長の仲里利信県議会議長は十一日までに、四十四都道府県議長に対し、政府に検定意見撤回と記述回復を求める意見書可決を求める依頼文を送付した。

 送付先は八日までに意見書を可決した奈良県、京都府を除いた。

「沖縄条項」新設 実行委が要望へ

 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会が十一日、県議会で開かれ、十五、十六日の要請行動で、面会を求めている福田康夫首相や渡海紀三朗文部科学相、町村信孝官房長官への要望書を確認した。検定意見撤回と記述回復、審議会の再審議、沖縄戦研究家の参加に加え、沖縄戦に関する記述に配慮する「沖縄条項」の新設などを求める。十一日までに百二十一人が東京での要請行動への参加を決めている。(一部地域既報)

知事、撤回拒否に不満 文科相発言(沖縄タイムス 2007.10.12夕刊)

 仲井真弘多知事は十二日午前の定例記者会見で、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を削除した教科書検定問題について、渡海紀三朗文部科学大臣が検定意見の撤回を拒否し、元通りに記述回復することは難しいとの認識を示していることについて、「大勢の方が集まった県民大会の流れからすると、(表現は)狭いかなという感じがする」と不満感を表明し、県民の納得の得られる記述回復が必要との認識を示した。

 県民大会実行委員会などが十五、十六の両日に予定している東京での要請行動には、公務を理由に同行できないことを明らかにした。

 教科書検定に関する「沖縄条項」の新設については「検定審議会なり専門家の皆さんの中できちっと議論していただくべきものじゃないかという気がする」との見解にとどめた。(以下略)

2007年10月12日(金)「しんぶん赤旗」

「強制」削除 文科省ぐるみ
沖縄戦「集団自決」 の検定意見
専門的検討なし
衆院予算委 赤嶺議員 撤回迫る

 高校日本史の教科書検定で、沖縄戦での「集団自決」に日本軍の強制があったとする記述を削除する発端となった「調査意見書」が、文科省ぐるみで作成され、専門家によるまともなチェックさえなかった――十一日の衆院予算委員会で、日本共産党の赤嶺政賢議員の質問で明らかになりました。赤嶺氏は「文科省が勝手につくった検定意見に固執することこそ『政治介入』だ」と批判し、検定意見の撤回と記述の回復を要求。気迫の追及に、第一委員室は静まり返りました。

 教科書検定では、発行者の申請を受け、文科省職員の教科書調査官が「調査意見書」を作成。教科用図書検定調査審議会で審議し、検定意見がつくられることになっています。

 赤嶺氏は、これまで二十年間、意見がついたことのなかった記述を削除した発端は、この調査意見書にあると指摘。同意見書には、「集団自決」が軍の強制であった記述について「誤解するおそれのある表現」と意見をつけ、担当局長ら七人の決裁印も押されています。文科省の金森越哉初等中等教育局長は「(同意見書は)検定意見の原案」と述べ、発端であることを認めました。

 赤嶺氏が、同意見書の作成にあたり、審議することになっている教科用図書検定調査審議会の委員から「集団自決」に関する意見はあったのかとただしたのに対し、金森局長は「意見は出されていない」と答弁。渡海紀三朗文科相は同意見書について審議会でも「意見はそれほどなかった」と認めました。さらに、審議会メンバーに沖縄戦の専門家がいなかったことも認めました。

 赤嶺氏は、今回の検定意見は結局、文科省のいう「専門的、学術的観点」どころか、「文科省の一職員が自分の考えでつくった」にすぎないと強調。しかも、調査官が意見の根拠とした文献の著者である関東学院大学の林博史教授も怒りの声をあげていることを紹介し、「検定意見の撤回、記述回復を求めるのは『政治介入』ではない。真実を回復してくれというやむにやまれぬ県民の要求だ」と迫りました。

 渡海文科相は、赤嶺氏の具体的な追及に対しても「(検定意見の撤回は)政治介入になる」との立場に固執し、福田康夫首相は「(沖縄県民の)思いを重く受け止める」と述べつつも、「文科大臣にしっかり対応させる」と述べました。

教科書検定のしくみ
 
 教科書会社が提出した申請本を文部科学省の常勤職員である教科書調査官が調べ、検定意見の原案である調査意見書を作成。初等中等教育局長らの決裁を受け、教科用図書検定調査審議会に提出します。

 審議会には委員のほか、臨時委員、専門委員がいます。いずれも文部科学相が任命し、各教科ごとに十の部会に分かれています。

 高校日本史教科書の場合、審議会では第二部会の日本史小委員会がまず審議。その結果を第二部会がさらに審議します。調査官の出した調査意見書に異論が出なければ、それがそのまま検定意見になります。

 今回の沖縄戦をめぐる記述の場合、審議会で実質的な議論もないまま検定意見が決められており、日本軍の強制についての記述削除、書きかえは文科省の“自作自演”と問題になっています。

2007年10月12日(金)「しんぶん赤旗」

論戦ハイライト
沖縄戦集団自決「軍の強制」削除
文科省が検証なしに20年来の記述覆す
検定意見こそ政治介入

 十一日の衆院予算委員会で日本共産党の赤嶺政賢議員が質問した沖縄戦「集団自決」にかかわる教科書検定問題。「沖縄の心」を背にした気迫の追及に、文部科学省が専門家の意見も聞くことなく勝手につくった意見書が、まともな審議もなく通ったもので、まさに自作自演のものであることが鮮明になりました。

赤嶺議員の質問

 「十一万人が集まった熱気。参加者の中には、戦争で犠牲になった自分の身内に『今日は手を合わせてから来たよ』という人もいたし、四十一市町村長すべてが参加した。文字通り、県民の総意として、教科書検定の撤回、記述の回復、これが確認された。総理はどう考えるか」

 冒頭、赤嶺氏は、教科書検定意見撤回の県民大会に十一万人が集まった思いを福田康夫首相につきつけ、見解をただしました。首相は「県民の思いをこれからも重く受け止めてまいりたい」というだけ。渡海紀三朗文科相は教科書会社の訂正申請がおこなわれても「検定意見の撤回にはならない」と答弁しました。

不十分な審議文科相認める

 「検定の中立・公平」をたてに検定意見の撤回を拒否する政府に赤嶺氏がつきつけたのが文科省が提出した「文部科学省原議書」です。二十年間もの間、誰も意見をつけなかった「集団自決」の軍の関与について、だれが意見をつけたのかを問いただしました。

 赤嶺  この原議書には、教科書調査官の四人の印鑑と、起案者の印があり、そして係長、専門官、企画官、課長、それから総合調整課長、そして審議官、局長の合計七人の印鑑が押されている。そのなかに調査意見書として、「日本軍によってあるいは集団自決に追い込まれた住民もあった」という部分に、「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現がある」と書かれている。

 赤嶺氏は、文科省ぐるみの検定意見だったことを動かぬ証拠で暴露したのです。

 赤嶺  この調査意見書というのは、調査官はじめ、文部科学省ぐるみでこういう意見をつくったということになるんですか。

 金森越哉・文科省初等中等教育局長 調査意見書は、教科書調査官が審議会の委員と各教科科目ごとの専門委員、教科書調査官の調査結果をとりまとめ作成するものだ。中立的公平的に行われているもので、政治的、行政的意図が入り込む余地がないものだと考えている。

 こういいのがれようとした政府。しかし、赤嶺氏は検定意見にもとづく教科書審議会の審議の中身にも切り込みました。

 赤嶺  大臣、専門的、学問的議論があったのか、認識しておられないんですか。大臣は。

 渡海文科相 検定調査書を専門官が出したものについて、審議にはかって、最終的に決めた。その段階で、いわゆる意見があったかなかったかというと、それほどなかったと聞いている。

 審議にはかりはしたが、意見はでなかった―。二十年もの間、意見がつかなかった歴史認識の問題で文科省が初めて意見をつけたにもかかわらず、それにたいする審議が極めて不十分だったことを認めたのです。

 渡海文科相は、「手続きはちゃんととられた。意見がでたのかということについて言えばあまり大きな異議がなかったと報告されている。それは議論をしていないというふうに言われるとちょっと違う」などと、居直りました。

2007101203_02_0b (写真)赤嶺政賢議員が示した、文科省作成の「調査意見書」の原議書。作成にあたった4人の教科書調査官の印と、担当局長ら7人の決裁印が押されています

沖縄戦専門家審議会に不在

 教科書検定には専門的、学術的意見を取り入れているという文科省。では、審議会の構成はどうだったか。

 赤嶺  審議会や小委員会や部会のなかに、沖縄戦の専門家はいたのか。

 金森局長 沖縄戦を専門に研究している方はいなかった。

 赤嶺氏は日本史小委員会のメンバーが沖縄の地元紙のインタビューに、「沖縄戦の専門家がいない。(文科省の)調査官のほうがよく調べており、(審議会の)委員より知っている。説明を聞いて納得してしまう部分がある。沖縄戦の専門家がいれば結果はだいぶ違っただろう」と答えていることも紹介。「沖縄戦について研究し、実績を積み重ねてきた、そういう人がまったく入らない場所で、沖縄戦について誤解を受けるおそれがあるとの意見書をだしてこれが独り歩きしている」と厳しく批判しました。文科省調査官が“証拠”としている本の著者・林博史氏の怒りの声も紹介しました。

 赤嶺  専門委員から事前の意見も寄せられなかった。今回の教科書検定は文科省の一職員が自分の考えで意見をつくって、学術的にも専門的にも、肝心の沖縄戦を体験した沖縄の県民の検証にたえられない意見だ。学問的検証もなされないで、文科省の役人の起案で、いつまでも残るようなことが許されるのか。

 福田首相 この問題については、文部科学大臣にしっかりと対応させてまいります。

 文科省の一職員の意見が検定意見となり、それを撤回もしない―この政府の姿勢を批判した赤嶺氏は、沖縄の思いをこめてこう結びました。

 赤嶺  教科書検定意見の撤回を求める、記述の回復を求めるのは、政治の介入ではありません。真実を回復してくれという、やむにやまれぬ沖縄県民の要求です。その要求を聞き入れない文科省が勝手につくった、その検定意見に固執することこそ政治的な介入だ。教科書に対する政治的な介入は文科省こそやっている。

2007101203_02_0c (写真)教科書検定調査官がまとめた調査意見書は「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現」と意見

調査官の意見の根拠とされた著書の作者の反論
 『沖縄戦と民衆』の著者・林博史氏(関東学院大学教授)

・「著書では(『集団自決』は)日本軍の強制と誘導によるものであることを繰り返し強調している。これが検定の理由にされているとしたら心外だ」(「沖縄タイムス」6月17日付)

・「私は、著書の中で1つの章を『集団自決』にあて、その中で『日本軍や戦争体制によって強制された死であり、日本軍によって殺されたと言っても妥当であると考える』との認識を示したうえで各地域の分析をおこない、渡嘉敷島のケースでは『軍が手榴弾を事前に与え、『自決』を命じていたこと』を指摘している」(同10月6日付に掲載された意見から抜粋)

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