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2007年9月18日 (火)

映画「シッコSiCKO」(追加)

 噂に違わずすばらしい映画でした。先進資本主義国で唯一国民皆保険制度のないアメリカの悲惨な実態を、知らない人はもちろん、知っている人にも是非見て欲しい映画だと思いました。

 僕もその一端は知っているつもりでしたが、当事者の生の言葉と映像はやはり力を持ちます。十人十色の様々な実態には涙を禁じ得ませんでした。

 この映画の持つ力の一端は、しばらく前にTBをいただいていますが、morichanのブログ「関係性」「『シッコ』で描く医療の現実(上)」という記事で紹介されています。そこに紹介されているような力を持つ映画だと思います。

 また、この映画に対する様々な批評や日本の医療制度の問題は、このブログの「『シッコ』で描く医療の現実(下)」という記事で紹介されています。

 さらに、「花・髪切と思考の浮游空間」にもタイミング良く19日に「ヒラリーと国民皆保険」と題する記事が書かれたので、過去の記事と共にリンクしておきます。

9月19日「ヒラリーと国民皆保険」

6月21日「マイケル・ムーア作品「シッコ」公開へ;米医療制度を批判」

6月21日「市場原理主義の怖さ;アメリカの実情は日本の将来図」

5月20日「マイケル・ムーアの告発は対岸の火事か?」

 この中で6月21日付の記事でリンクされている「暗いニュースリンク」の記事にもリンクしておきます。

2005年2月7日「アメリカ:個人破産の半数は高額な医療費が原因(ロイター通信2005/02/02付け記事)」

 アメリカの悲惨極まりない実態は、実際にこの映画を見ていただくとして、今や当たり前と言うべき国民皆保険制度の導入を、アメリカの政治家たちは何を根拠に拒絶してきたのか。

 「社会主義」ということなんだそうです。国民皆保険制度は、医療を民間の手から国家が奪い取るが故に、社会主義の制度であり、社会主義であるが故に、強制労働とあらゆる自由の剥奪、そして貧しい生活へと導くのだそうです。こんな嘘八百の馬鹿げた議論を、様々な政治家やメディアがキャンペーンするのです。その政治家たちは、例外なく医療で巨額の利益を上げている民間保険会社から多額の献金を受け取っています。

 この「国民皆保険制度は社会主義だ」という議論には二重の誤りがあります。

 第1に、国民皆保険制度もさらには医療費無料制度は、社会主義に特有の制度ではありません。映画の中でも紹介されているカナダ、イギリス、フランスにはこの制度がありますが、それらの国は資本主義の国であって社会主義ではありません。また、この制度が実現されているが故に社会主義に向かっているなどと言う人はどこにもいないでしょう。

 第2に、社会主義は、強制労働・自由の剥奪・貧困を導く制度ではありません。人間の生存に不可欠である人間の経済活動の動機を、企業利潤の無限の増大ということから、人間1人1人の自由の無限の増大・向上へと切り替える制度です。崩壊したソ連は自らを社会主義だと言っていた訳ですが、社会主義を自由の剥奪等と理解することは、この旧ソ連の言い分を無条件に受け入れるものでしかありません。ソ連崩壊から16年、もうそろそろこのソ連追従の思考から卒業してもいい頃でしょう。

 アメリカの政治家たちが、国民皆保険制度の導入を拒絶する理由を社会主義だとしていることは、この導入拒絶に何らの正当な理由を挙げられないということを意味しています。国民皆保険制度はそれほどまでに当たり前の制度だということです。

 なお、劇場で買ったパンフレットを開くと、デーブ・スペクター氏が、「マイケル・ムーアはジャーナリストとして失格」だとして、「本来入れるべき事実やデータを意図的に落として作品を作っている」と指摘し、「アメリカの医療技術や製薬技術は世界ナンバーワンなんですよ」と述べています。

 しかし、これは極めて不真面目・不見識な者の戯言というべきでしょう。国民皆保険制度と医療技術の向上は全く別の問題だからです。

 上述の「社会主義論」といいこの「医療技術向上論」といい、自らの議論の正当性を主張できない者が最後に頼る「論点のはぐらかし・すり替え」と言うべきです。この「医療技術向上論」をわざわざパンフレットに掲載した編集者は、パンフレット自体を汚す者として批判されるべきです。掲載しないのが正しい態度でした。

 最後に、このパンフレットには、全国保険医団体・理事の三浦清春さんとおっしゃる方が、アメリカと日本の医療制度について解説されています。その中で、日本の医療制度を考えるに当たっての5つの教訓をこの映画から読み取っています。大切だと思うので引用しておきます。

 (1) 国の責任で社会保障としての国民皆保険制度を堅持することである。それがすべての医療改革の土台であり、すべての国民のためであり、そしてそれが世界の大勢である。医療には、市場化・営利化はなじまないのである。

 (2) 保険給付は「現物給付」で、窓口一部負担や混合診療は原則禁止にすることである。自己負担や自費診療があると必ず医療を受けられない人が出てくる。

 (3) 民間医療保険は公的医療保険に決して代われるものではないということである。民間医療保険は医療を最も必要とする人を真っ先に排除するからである。

 (4) ひとたび医療分野を営利企業に開放してしまうと、もう元の医療制度に戻すことはきわめて困難となるということである。アメリカでは有力議員は共和党も民主党も関係なく保険会社や製薬企業から多額の献金をもらっている。国民皆保険制度を目指したあのヒラリー・クリントン議員さえも例外ではない。

 (5) 政府のプロパガンダで洗脳されないことである。アメリカ政府は国民皆保険制度にすれば共産主義になると国民を脅し続けてきた。国民皆保険制度は資本主義も社会主義も関係ない話なのである。

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コメント

トラックバックありがとうございました。私もtbさせて頂きました。

挙げられたこの五点は大事な点だと思います。
続々と問題提起をするマイケルムーアはすごいと思います。
日本にもそういう映画人が現れてほしいと思います。

今後ともよろしくお願いします。

 大津留さん、TB、そしてコメントまでありがとうございました。

 マイケル・ムーアの映画は見るたびに刺激されてしまいます。見ると必ず何か言いたくなってしまいます。

 一方で大津留さんも見られた「釣りバカ日誌」のような映画も好きです。「18」も大津留さんの記事を読んで見たくなりました。

 こちらこそよろしくお願いします。


三浦清春さんの指摘(2)に関連する重大な問題が、「後期高齢者医療制度」です。あなたは今、何歳ですか? 老人になることはないと、あなたは思っていませんか?
この問題は、現在の老人の問題であるばかりではなく、すぐれて「若いあなたの問題」なのです。
ぜひ、知ってください。
ほとんど更新停止状態ですが、これからもよろしくお願いします。

 ニッパチさん、こんにちは。

 後期高齢者医療制度はおっしゃるようにひどい制度だと思います。医療がより必要な人間(老人)から医療を遠ざけていく制度だからです。「シッコ」で登場した民間保険会社のやっていることと同様の方向性を持った制度ですね。ということはこの先医療から遠ざけられるのは果たして老人だけで済むだろうかという疑いが出てきます。

 医療行為自体を減らせば保険給付が減って保険会計が潤うのは当たり前のことです。しかし、それでは何のための保険制度かということになります。

 保険料を上げ、医療行為を減らすことによって保険給付を減らし、そうやって全体として国の負担を減らし、延いては大企業の負担を減らすという路線を改める以外にないと思います。

 コメントをありがとうございました。こちらこそよろしく!

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