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2007年9月 5日 (水)

友寄英隆「EU50周年と『社会的市場経済』」

 近頃は何でもかんでも「市場」「市場経済」と魔法の杖だかドラえもんのポケットだかを思わせる単純な議論が目立ちます。

 しかし、「市場経済」にも、アメリカ流の「市場原理主義的な市場経済」もあれば、中国などの「社会主義をめざす体制を基礎にした市場経済」もあります。

 そういう中で、そのどちらとも異なる、EU諸国の「雇用や福祉、農業や環境を重視する独自の市場経済」=「社会的市場経済」に注目しているのが、この友寄さんの論説です。

 この「社会的市場経済」は、「各国の主権を尊重した地域統合」であるEUの中で発展してきました。この「各国の主権を尊重した地域統合」は第二次大戦後の世界史的条件のなかで生まれた新しい現象です。それは第二次大戦以前の、植民地化、従属国化という意味での「帝国主義的併合」とはもちろんのこと、多国籍企業の活動が国境を越えて、なしくずしに浸透・拡大してきた「グローバリゼーション」とも異なります。

 友寄さんは、「科学的社会主義の立場からの、EUの『社会的市場経済』や経済共同体についての創造的探究が求められています」と述べます。

 単なる経済理論のための議論ではなく、小泉・安倍の「構造改革」政策を根本的に克服していくためにも必要な考察だと思います。

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 興味深い論説だったので引用しておきます。

2007年9月1日(土)「しんぶん赤旗」

経済 時評
EU50周年と「社会的市場経済」

 EU(欧州連合)は、EEC(欧州経済共同体)を決めた一九五七年のローマ条約調印から、今年で五十周年を迎えました。

 EEC発足時の原加盟国は六カ国(西独、仏、伊、蘭、ベルギー、ルクセンブルク)でしたが、五十年後の今日では、中・東欧諸国を含め二十七カ国(四億九千万人)にまで拡大しています。共同市場としてもユーロという統一通貨を持つまでに発展してきています。

 EUは、「新自由主義」の市場原理主義とは違って、雇用や福祉、農業や環境を重視する独自の市場経済を発展させてきました。それは、「社会的市場経済」(social  market  economy)という考え方です。

 EU五十周年にあたり、EUの「社会的市場経済」とは何か、経済共同体の発展と経済学の課題について考えてみましょう。

EUの「社会的市場経済」を支える労働者・国民のたたかい

 EUの「社会的市場経済」は、二つの政策的要素に支えられているといわれます。

 一つは、市場経済が効率的に機能するためには、市場経済を支える国家的な枠組み、公正なルールが不可欠だということです。

 もう一つは、市場経済が公正に機能するためには、市場で解決できない雇用、福祉、環境などの社会政策が必要だということです。

 二つの要素のうち、前者の市場のルールは、共同市場としてのEU全体で統一的にきめられていますが、後者の社会政策は、そのほとんどは加盟各国が独自に実施しています。ですから、その方法と水準は、各国の経済力や社会的条件によって、きわめて多様です。

 EUでは、「欧州基本権憲章」(二〇〇〇年)を定め、雇用や社会保障の権利と目標を示し、各国での実現をめざして、EUで活動する企業には高い水準のCSR(社会的責任)を求めています。

 しかし、EU内での経済活動の活性化のための「労働力の移動の自由化」は、各国の社会政策に新たな課題をもたらします。より発展した資本主義国では、相対的に低賃金の移民労働者との競争を強いられ、労働者・国民が歴史的に勝ち取ってきた社会的諸権利の水準引き下げをもたらしかねないからです。

 EUでも、近年は「新自由主義」の影響が強まっています。EUの「社会的市場経済」の発展は、EUの労働者・国民の連帯したたたかいにかかっているといえるでしょう。

多国籍企業によるグローバリゼーションと経済共同体の違い

 EUの発展過程は、多国籍企業の活動が国境を越えて、なしくずしに浸透・拡大してきたグローバリゼーションとは、その発展法則を異にしています。

 いま世界各地域で締結されているFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)と経済統合との関係について、EUの経済統合研究の第一人者といわれるJ・ペルクマンスは、次のように述べています。

 「FTAは、多角的貿易自由化を局地的に『深化』させることにはなる。しかし、FTAは、経済統合自体の深化に適したものではない」(『EU経済統合』田中素香訳、〇四年十一月、三五~三六ページ)。

 各国の主権を尊重した経済統合を前進させるためには、加盟国の共存共栄、加盟国のそれぞれの国民生活の向上という見地が不可欠です。そのため、EUでは、どの経済統合の段階でも、加盟国の全会一致の合意が原則とされてきました。

 たとえば、経済統合の出発点となった一九五一年のECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)は、FTAを結んで、資本活動を自由化するという方法ではありませんでした。

 もちろん、EUも、FTAやEPAを多数結んできました。FTAやEPAの意義を一般的に否定してきたわけではありません。

 J・ペルクマンスがEUの経験として述べていることは、FTAやEPAを積み重ねていけば、なし崩しに経済共同体へ行き着くという安易なものではないということでしょう。

地域統合、経済共同体の理論的探究は、経済学の新しい課題

 第二次大戦以前は、植民地化、従属国化という意味での帝国主義的併合は、盛んにおこなわれていました。しかし、EUのような各国の主権を尊重した地域統合が広くおこなわれるようになったのは、第二次大戦後の世界史的条件のなかで生まれた新しい現象です。

 東アジアでも、近年は、「東アジア共同体」の問題が活発に論じられるようになっています。もちろん、ヨーロッパと東アジアとでは、政治・経済だけでなく、歴史、言語・文化・宗教など、ひじょうに異なっています。

 EUの経験を分析し、その理論的意味を研究することは、二十一世紀の世界史の発展方向を探るうえで、たいへん重要になっています。それはとりわけ経済学にとって喫緊の課題といえるでしょう。

 先に引用したJ・ペルクマンス著『EU経済統合――深化と拡大の総合分析』は、「一九五〇年代から最近時点までのEU統合を包括的に分析・総合した文字通りの大著」(邦訳で七八一ページ)です。この研究で、ペルクマンスは、「近代経済学」のミクロ・マクロ理論、その応用理論である国際経済学を駆使して「多層的政府の経済理論」を展開しています。

 こうした「近代経済学」の研究成果をも批判的に検討しながら、科学的社会主義の立場からの、EUの「社会的市場経済」や経済共同体についての創造的探究が求められています。(友寄英隆)

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