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2007年6月21日 (木)

友寄英隆「『国際競争力』論の落とし穴」

 マジックワードのように使われる財界流の「国際競争力」論。今朝のしんぶん赤旗に掲載された友寄さんの「経済時評」はこの議論の誤りをつくものでした。

 すなわち、財界の言う「国際競争力」は、「国」ではなく「個別の製品(産業・企業)」の競争力を指し、その上でその決定因子の中からたとえば「賃金」だけを取り出して「国際競争力」へと論理を短絡させるものである。

 しかし、「個別の製品」の「国際競争力」は、「賃金」だけで決定されるのではなく、「製品の品質」、「労働生産性」、「為替レート」など様々な要素で決定される。

 従って、財界の賃金論を前提にしても「厳しい国際競争に勝つためには、賃金は抑制すべきだ」という結論にはならず、「十分」「賃上げ余地はある」という結論になる(日経3月26日付、根津利三郎氏の論文)。

 そもそも、「賃金」を引き下げ続けることは「労働力の再生産」の条件を掘り崩して「労働生産性」を低下させるのであり、「高い価値をもった労働力の安定した再生産」を目指すことこそ、「労働生産性」の上昇をもたらし「国際競争力」を強めることができる、と主張しています。

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 論説を引用しておきます。根津論文については以下の記事も参照してください。

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3月28日「賃上げの余地は十分ある」

4月11日「労働生産性をめぐる2つの記事」

2007年6月21日(木)「しんぶん赤旗」

経済時評
「国際競争力」論の落とし穴

 日本の財界が好んで使うキーワードに「国際競争力」という用語があります。

 財界は、「国際競争力のために」ということを、いわば「錦の御旗」のようにかかげて、しゃにむに賃金を切り下げたり、法人実効税率の引き下げを要求したりしています。

 財界の言う「国際競争力」とは何か。その主張にはどんな理論的根拠があるのか。

ファジーで定義されにくい「国際競争力」

 一般に、「国際競争力」といっても、国として、企業として、個別の製品としてなど、さまざまなレベルがあります。

 国レベルの場合、たとえばスイスの国際経営開発研究所(IMD)が、各国の国際競争力ランキングを発表しています。それによると、日本は九〇年代初頭まではトップでしたが、その後、〇二年に二十七位、〇六年に十六位、〇七年には二十四位に下がっています。

 いったいどのような方法で国の国際競争力をランク付けしているのか。IMDでは、各国の三百二十三項目の統計と聞き取り調査の結果を数値化し、それを集計して順位をつけるとしています。三百二十三項目のなかには、賃金や労働時間とともに、男女差別や環境汚染などの項目も含まれています。

 しかし、こうした質的に種々雑多な要素を単純に数値化して集計することには無理があります。個々の項目の選択、数値的評価、それらの集計など、すべての段階で、恣意(しい)的な判断が入ってくるからです。

 もともと「国際競争力」という用語自体、ファジー(あいまい)な概念です。「国際競争に打ち勝つ力」などと言い換えても、その“力”の内実が何なのか、簡単には定義されにくいからです。

「国際競争力」強く賃金水準も高い

 財界が「国際競争力」という場合は、もっぱら個別の産業や企業、製品のレベルの競争力を指しています。しかも、賃金なら賃金だけ、法人税率なら法人税率だけをとりだして、単純に国際比較するという方法です。

 こうした財界流の「国際競争力」の議論は、単純な数値の国際比較になるため、いかにも客観的な根拠にもとづくように見えます。たとえば「中国やアジア諸国に比べると、日本の賃金水準は高すぎる。国際競争力のために、賃下げが必要だ」などという論法です。

 しかし、ある製品の競争力を計る場合、賃金はその重要な要素ですが、ほかにも製品の品質、労働生産性、為替レートなど、競争力を規定するさまざまな要素があります。

 たとえば、労働生産性が四倍だったら、賃金が二倍でも、単位あたりの労働コストは二分の一になります。さらに、労働生産性は、機械設備の技術的条件、労働者の熟練度、労働の強度など、さまざまな要素に規定されており、これらの要素すべてが「国際競争力」の内実を複合的に構成しています。

 「国際競争力」と労働生産性の関連については、日本経済新聞の経済教室欄に、注目すべき論文が掲載されました。根津利三郎氏(富士通総研専務)の論文「十分ある賃上げ余地」です(「日経」〇七年三月二十六日付)。

 根津氏は、「『厳しい国際競争に勝つためには、賃金は抑制すべきだ』という議論は誤りだ」と明快に主張します。その根拠は、近隣のアジア諸国とくらべて日本の労働生産性はひじょうに高いことに加え、この四、五年で、さらに生産性が上昇しているために、「国際競争力を考えても、全体としては二%程度の賃上げの余地はある」としています。そして、早めに賃金を引き上げて内需主導型の成長に転換しないならば、日本経済は、急激な円高に見舞われるだろうと警告しています。

 根津氏の賃金引き上げ論は、かねてより財界が主張してきた「生産性基準原理賃金」論の枠組みを前提としており、われわれの賃金論の立場とは異なります。しかし、異常な「国際競争力=賃金抑制」論は、財界自身の賃金論の立場からみても、理論的に成り立たないことを示しています。

異常な賃金抑制は、「労働力の再生産」の危機

 財界の「国際競争力論」の特徴は、IMDの三百二十三項目集計方式とは正反対に、ある単一の項目(賃金など)だけをとりだして「国際競争力」を論ずるという方法そのものにあります。これは、「国際競争力」の内実が定義されにくいことを逆手にとった、きわめて意図的で、世論誘導的な方法です。

 現実の経済では、さまざまな要因が連関し、相互作用のなかで変動しています。「国際競争力」をかかげて賃金だけをとりだして切り下げ続けるならば、短期的には企業利潤を増大させる効果があったとしても、長期的にみれば、「労働力の再生産」の条件そのものを掘り崩して、将来の労働生産性の低下をもたらすことになるでしょう。

 現実に、日本では、労働者の賃金と雇用、国民の暮らしを犠牲にして、一握りの大企業だけが大もうけをするという異常な成長方式が続き、そのために、貧困と格差が拡大し、若者のワーキングプアや少子化問題など、「労働力の再生産」の危機が進行しつつあります。これは財界の「国際競争力」論にとって予期せざる落とし穴ともいうべき事態です。

 最賃制の改善、労働法制の是正、社会保障制度の拡充など、雇用と労働条件の底上げをおこない、高い価値をもった労働力の安定した再生産をめざすことこそ、労働生産性の上昇をもたらし、「国際競争力」も強めることができるはずです。(友寄英隆)

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