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2007年6月15日 (金)

女性自衛官人権訴訟、第1回口頭弁論での原告側代理人・佐藤博文の意見陳述

 『非戦つうしん号外14』からの転載です。

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平成19年(ワ)第1205号 損害賠償請求事件
原告  
被告  国

意見陳述

2007年6月11日
札幌地方裁判所 民事第3部2係 御中
原告訴訟代理人
弁護士 佐藤博文

 第1回弁論にあたり、弁護団として、本件事案の特徴並びに今後の審理への要望について述べます。

1.本件における強姦未遂、嫌がらせ、退職強要などの不法行為は、民間企業や一般の公務員職場でのセクハラ・パワハラ行為と本質的な違いがあります。裁判官には、まずこの点をよく理解していただきたい。

  第1に、自衛隊は、わが国で最も徹底した上命下服の組織であり、21歳の原告は、階級的には一番下に属することです。誰からのどんなものであれ、それが命令や指示とされている限り、無条件に応えなければなりません。異議を唱えることは、それ自体が命令違反、重大な規律違反とされるのです。訴状および後述のとおり、原告がまがりなりに被害者として扱われたのは事件後僅かであって、部隊が加害者側を擁護し、原告の訴えを封ずる方針を決めたときから、彼女は部隊そのもの、特に上司たちと対峙し、たたかわざるをえませんでした。それがいかに困難で壮絶なものであったか、そこを理解していただきたい。

  第2に、上命下服には公私の区別もないということです。自衛隊の「服務指導書」によれば、服務指導の対象と範囲について、勤務に関する事項のほか、私生活に関する事項を含め、組織に影響するものはすべてを対象とする旨規定されています。公と私の峻別は近代市民社会自明の原理ですが、自衛隊には通用していないのです。

  これを助長しているのが、原告の職場環境、住居環境の異常さ、劣悪さです。自衛隊は、近時、女性を大量に採用していますが、施設が追いついていません。本件でも、原告は、庁舎の3階が宿舎とされ女性5人が相部屋生活をしています。2階が仕事場、1階が食堂です。階段1つで全部繋がっています。庁舎は大きくないので、入ればすぐに全体が見渡せるほどです。

  この1階と地階で仕事をしていたのが加害者であり、部隊はこの加害者を事件後9カ月にわたって移動させることなく、原告が毎日顔を合せざるをえない状態を放置し続けました。部隊が原告を庇うことが明確になってからは、原告に示威するがごとく歩いていることもありました。この非常識、この異常さ、それによる原告の苦痛を、よく理解していただきたい。

  このリアリティは、原告の主張及び証拠を理解するうえで決定的に重要なので、原告・弁護団としては、早い段階で現地・現場の検証をしていただくことを考えております。

  第3に、自衛隊は、完全なる男性社会だということです。彼女の所属基地は約180名中、女子は5名のみで、皆独身、21歳の原告が最年長です。家族や生まれ育った地域から遠く離れ、人里離れた山中で「密室」生活を送っています。近時自衛隊もカウンセラ-を置くようにしたとはいえ、その実態は原告が述べたように、特に若い女性たちにとっては何の役にも立たないものです。

2.次に述べたいことは、先ほど原告が意見陳述したとおり、本件提訴をしたその瞬間から、訴状で述べた事実をはるかに超える、凄まじい嫌がらせが行なわれていることです。弁護団は、これらについて追加主張する予定であり、請求の趣旨の拡張も検討しています。

(1) 有給休暇を取って提訴をしたその翌日、5月9日午前8時、原告がいつものとおり本部庶務の執務室で勤務を開始しようとしたら、上司から「今日から奥の部屋に行け」と言われました。「奥の部屋」とは、部屋に照明もついていない、普段は訓練の道具などを置いている、机も椅子もない部屋のことです。

    原告は、直ちに抗議しました。泣きながら弁護団にこの仕打ちを伝えてきました。部隊は、おそらく何の準備もなく命令を発したらしく、直ちに実行に移すことができず、棚上げ状態となりました。原告と弁護団、支援する会などの抗議の結果、5月23日の電話やりとりにより事実上撤回されたことを確認しましたが、解決までに2週間かかりました。

(2) 最近の問題は、原告に対する懲戒処分の脅しです。本訴訟を提起した原告に対し、加害者に対する処分と「差し違えてやる」と言わんばかりに、常軌を逸した取り調べが行なわれています。

    これには少し説明が必要です。

    訴状記載の昨年9月9日の強姦未遂事件は、加害者が夜勤の時に、男性隊員何人かで宴会をし、その結果加害者が泥酔した後に起きたものです。ところが、加害者はもとより、その引き金となった深夜の宴会に参加した隊員、そしてこれらの上司の責任が、9か月経った今日に至るまで、何一つ問われていません。正確には、事件直後に取り調べがいったんは始められたのですが、すぐ曖昧にされ放置されたのです。

    ところが、原告が本訴訟を提起してから、にわかに取り調べを再開し、上司が作成した調書への署名押印を強要してきました。しかし、その内容は、加害者の行為を対象にするだけで、その引き金となった深夜の宴会の経緯や実態、参加者などに触れず、結果的にはこれらを不問にする意図が明らかなものでした。

    さらに、それに止まらず、部隊は、本件事件発生の1週間前の9月2日、本件の加害者が夜勤のときに、ボイラー室で宴会があり、そこに原告が参加して飲酒していたとして、懲戒処分のための供述調書の作成を強要してきています。しかし、この取り調べは、加害者が原告の同意があったという「弁解」をし、その「証拠」として1週間前の夜勤のときも原告と一緒に飲んでいたと言ったことに始まるものでした。すなわち、加害者の弁解を裏付け、原告の「落ち度」を作出するものでした。しかも、原告は、このとき酒を飲んでいないのに飲んでいたとされ、後輩の女性隊員が加害者からの連絡で行ったのに原告が呼び出したとする内容の供述調書にされていました。かかる取り調べを、深夜1時頃に呼び出して行なうこともあった(昨年10月)という異常さでした。

    実は、夜勤中に飲酒・宴会し、女性隊員を呼び出して参加させることは、部署やメンバ-を問わず日常的に行われていました。本件事件を機に、かような実態こそ明らかにし、関係者及び責任者の厳格な処分と防止対策こそ行なうべきなのですが、部隊はかような事実を隠蔽しようとしたのです。

(3) 部隊は、提訴後、原告の取り調べを再開しました。弁護団は5月24日付要請書で「訴訟以外の行政処分等に関わる問題についても代理するので、今後、原告への聴取等の必要があれば当職らに連絡されたい」と通知し、6月5日付申入書では、この問題で群司令との面談を求めました。しかるに、部隊は、

    ① この間原告に行なった取調べについて原告代理人に一切連絡せず、
    ② 9月2日の件は、原告に懲戒という不利益処分を課すものなのに、取り調べが任意であることを告げず、業務命令として従わざるをえないように言って行い、
    ③ 9月9日の件の供述調書(こちらは原告が被害者)と同時並行=抱き合わせで行い、
    ④ 勤務時間外に呼び出して行い( 前述したとおり昨年10月には深夜1時頃からの取調べすらあった)、
    ⑤ しかも、取り調べを担当したのは、提訴後2チャンネル記事を原告や隊員の目に触れるように置いておいた上司(3尉)、昨年10月に深夜の取調べを行なった上司(1尉)らであり、公正かつ適正な取り調べができる者ではなく、
    ⑥ 6月6日の取り調べは、上司から渡された「答申書」(作成者は原告とされる)を原告に示し、内容が事実に反すると異議を述べているにもかかわらず、原告の署名押印を執拗に求める、
というものでした。

    弁護団は、6月7日、部隊に対して、適正手続に反する違法・不当な取り調べを直ちに中止するよう求めると同時に、もし原告の取り調べが必要ならば、代理人にその旨事前に連絡し、調整するよう通告しました。しかし、それでも部隊は、代理人の要請には応じない、代理人との面談にも一切応じない、という頑な態度であり、7日も翌8日も原告に対する取り調べ(彼らが作成した調書への署名押印の強要)を続けています。

3.このように、この間の部隊の対応は、一般社会の市民常識からすると、まるで鋼鉄の壁を相手にしている錯覚に陥ります。このような表現は、もしかすると褒め言葉になるのかもしれません。

  なお、この間国会でも、5月14日、24日、28日と、衆参の国会議員2名が3回にわたり、本件問題を取り上げましたが、それでも防衛省・自衛隊の対応に変化の兆しは見られません。

  弁護団は、被告代理人に対して、かような部隊の実態をよく把握し(基地の現場は、法務官や指定代理人に真実を話していない可能性があります)、原告に対してこれ以上違法な行為を重ねないよう、法治主義に基づく適切な指導をしていただきたいと考えます。

以上

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