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2007年5月26日 (土)

赤羽礼子・石井宏『ホタル帰る―特攻隊員と母トメと娘礼子』

 数年前の降旗康男・監督の映画「ホタル」や、石原慎太郎・脚本・総指揮の映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」に登場する鳥浜トメさんを軸に、知覧から飛び立った特攻隊員の姿を、石井宏氏が、トメさんの二女・赤羽礼子さんの口述などを基にまとめたもの。自ら苦労して育ち、献身的で世話好きなトメさんと特攻隊員の交流のエピソードを集めたものです。

 死を間際にした様々な特攻隊員たちの真剣さ・真面目さが伝わってきて涙を誘われ、また真面目な気持ちにさせられます。しかも、あくまでも暖かく・誠実なトメさんとの交流を軸に描かれているので、読みやすい。

 描かれている特攻の事実の深刻さ・重大さ故に、歴史の真実をつかむ意欲をかき立てられます。

 ただ、この本の戦後認識は、「ラジオからは『カム・カム・エヴリボディ』の歌が流れる。夜ともなれば『真相はこうだ』という番組が、旧日本軍の嘘や悪を暴き立てる。合法化された共産党の天皇制攻撃が始まり、『汝臣民飢エテ死ネ、朕ハタラフク食ッテルゾ』のプラカードがメーデーで掲げられ、ついに皇居前の“血のメーデー”に至る。教科書で不都合だと思われる叙述はスミで消され、スミだらけで読めない教科書になった。/“戦後”はこうして音を立てて“民主主義”に向かい、知識人たちがラジオや新聞で民主主義とは何か、自由とは何かをしたり顔に説く。軍国主義、帝国主義は目の仇となり、激しく非難攻撃される。天皇までが『神聖ニシテ侵スベカラズ』の旧憲法の地位から降格し、かつての現人神は“人間天皇”になった。音を立てて変わりゆく世の中にあって旧特攻兵士を語ることはタブーになった」(p.p.208-209)という風なものです。

 また、石井宏さんは、トメさんの再三再四の請願により知覧町が建てた観音像を、「特攻隊員を顕彰し、その霊を慰めることが公に認知された証」とします(p.217)。

 また、石井さんは、知覧特攻平和会館・初代館長で元特攻隊員の板津忠正さんの特攻資料収集に至る決意を、「特攻隊員として死んだ僚友たちの死をむなしいものにしてはいけない」、「世は逆風であり、軍国主義時代のすべては悪として葬り去られようとしている。しかし、高級職業軍人のやったことはともかく、特攻の死は崇高な死であり、これを風化させてはならない。これを正しく歴史の表面に出し、語り継げるようにしなければならない」と記し(p.220)、さらに、「『特攻』とは是非善悪いっさいを超越した無条件の悲しみなのである。人間のこれほどの大集団がこれほど崇高な存在と化して死んでいったことは、人類の歴史において一度たりともあったためしはないのだ」と述べます(p.10)。

 もちろん、特攻隊員の死は、断じて「犬死に」などではありません。また、石井さんが述べる通り、「自らの死をもって特攻隊員に詫びた(あるいは天皇に対して詫びた)潔い人たちが58人もいたのである。だが、たった58人かという声もある。そう、特攻作戦を立案した、実施した、あるいは現場で特攻隊員を選び、出撃の命令を与えた指揮官の多くは、おめおめと復員し、生き延びたのである」、「なんという卑屈さ。旧軍人も一皮むけばそんな卑屈な、いいかげんな手合いだったのである。そんな手合いのために、あまたの特攻隊員たちが若き命を散らせてしまったかと思うと、怒りは再び新たにな」ります(p.p.184-185)。

 しかしながら、この「卑屈」で「いいかげんな」「旧軍人」への「怒り」を「新た」にしながら、特攻隊員のかけがえのない生と死を尊び、感謝し、「霊を慰める」のは、特攻隊員の死を限りなく「崇高」なものとし、「顕彰」することによってではなく、あくまでも歴史の真実をつかむことによって成し遂げられる、と僕は思いました。板津さんの努力には遠く及ばないものの、努力せねばなりません。

 なお、冒頭に挙げた「ホタル」が、「“特攻の母”とうたわれた鳥浜トメとホタルになって帰ってきた特攻兵士の宮川軍曹や光山少尉などの話にヒントを得て、自由に書きおろした脚本によっている」のは、この本の「あとがき」に書いてあって知りましたが、「俺は、君のためにこそ死ににいく」も、この本にある話を基にしつつもやはり石原氏の創作であることも、この本を読んで知ることができました。

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