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2007年5月21日 (月)

古関彰一『憲法九条はなぜ制定されたか』(岩波ブックレットNo.674)

 古関さんの本を読んだのはこれが初めてです。とても興味深いものでした。最近のNHKの憲法関連の番組がこの古関さんの研究を踏まえて作られていることが分かります(たとえば、5月2日放送の「そのとき歴史が動いた―憲法九条 平和への闘争 ~1950年代 改憲・護憲論~」など)。以下に内容を紹介します。

 古関さんは、憲法9条の発案者が幣原喜重郎首相だとする通説に疑問を呈し、連合国軍総司令部(GHQ)の最高司令官であるダグラス・マッカーサーが、天皇の戦争責任を問い、天皇制の廃止を要求する国際世論に抗して、天皇制を擁護するために、天皇からの政治的権能の全面的剥奪とともに提案し、日本政府もその趣旨で受け入れたものだとします。

 しかも、マッカーサーは、憲法9条を定めても、沖縄をアメリカの支配下において軍事要塞化することによって、日本防衛ないし日本の反共の防波堤化は可能であるとして、憲法9条に軍事的合理性があるという考えだったことを明らかにし、かつ、天皇自身がこの沖縄の軍事要塞化を自ら積極的に提案していたことを示します。

 すなわち、(1)憲法9条、(2)天皇制の存続と天皇の戦争責任の免責、(3)沖縄のアメリカの支配下での軍事要塞化、の3つは不可分一体のものであったことを明らかにします。

 他方、日本国民は、戦争により塗炭の苦しみをなめさされたばかりであるので、憲法9条を当然のものとして受け入れていきますが、上記(2)(3)の問題とは切り離して受け入れます。

 この中、アメリカ政府は1948年以降、日本の再軍備と憲法9条の廃止を基本方針として明確に追求し、日本政府は1950年の朝鮮戦争とそれに伴う警察予備隊の設立以降この要求を受け入れていきます。1954年からは保守政党が憲法9条改正を打ち出し始め、1955年には憲法改正を党是とする自由民主党が結成されます。

 ところが、翌1956年の参議院選挙では、自民党は憲法改正を公約からはずします。世論は憲法改正反対の方が上回っていたからです。にもかかわらず、マスコミ・世論はこの選挙を改憲vs護憲の選挙と受け止め、結果として憲法改正の発議を阻止するのに必要な3分の1の議席を護憲派が占めることになります。これ以降改憲派は、憲法改正をタブー視して1960年代以降は「私の内閣では憲法改正は致しません」が首相の常套句になります。

 こうして、憲法9条を支持する世論は確実に定着していくのですが、この世論は上記(2)(3)の点が抜け落ちたものでした。そのため、1990年代以降「国際貢献」論が跋扈する中では十分には抗っていけない憲法意識であるとします。

 古関さんは、この点を踏まえ、憲法9条は、単に日本が戦争しないことを定めただけではなく、日本が二度と戦争をしないことを連合国ないしアジアの戦争被害国に誓った誓約書であることを確認する必要があると指摘します。憲法9条を持っているからこそ、天皇制を残したまま戦後の国際社会に日本が復帰することが許されたのです。

 このように述べた上で、古関さんは、日本人の「力まかせに事を解決すること」を好まない心情あるいは歴史的な安全保障感と、冷戦後の戦争の変容により軍事力だけでは何も解決できない時代になったことを指摘し、非軍事の安全保障政策の必要を訴えます。

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