小池清彦・竹岡勝美・箕輪登『我、自衛隊を愛す、故に、憲法9条を守る』
遅蒔きながら読みました。今私事でとても忙しいのでもう少ししたら読もうと思っていたのですが、空いた時間に読み始めたらすぐに読めてしまいました。
思っていた以上に、著者の方々の気迫が伝わってきます。中でも、昨年5月に亡くなられた箕輪さんの裁判での証言は圧巻です。読みながら涙を抑えられませんでした。その箕輪さんの自衛隊イラク派兵差止北海道訴訟の弁護団の佐藤博文さんの解説も良い。
読み進む中で、小池さん、竹岡さん、箕輪さんへの尊敬の念が自然と湧き上がってきました。
僕の直接の知り合いの中にも、同様の尊敬の気持ちを抱かせる方々がいます。数年前に亡くなりましたが、先の日本の侵略戦争の中で悲痛の体験をなさり、戦後立正校正会の幹部を務められていた方、靖国参拝を正当だと主張されながら現憲法の前文第2項が日本人の道徳の最高基準だと主張される元裁判官の方です。立正校正会の方とは、僕が日本共産党の支持者だと知りながらとても親しくお付き合いをさせていただいていました。もっとたくさんのお話を伺いたかったのですが、それを成す前に他界されたのが何とも悔やまれます。
僕は、このブログで、憲法9条を守ろうという主張と運動は、日本の自衛権を否定しようということでも、日米安保条約を否定しようということでもなく、アメリカが日本の自衛と無関係に行う戦争に日本の自衛隊が参加して武力を行使するという国づくりに反対しているのだということを強調してきたつもりですが(たとえば、4月19日の記事、4月27日の記事)、そのことを改めて確信させてくれる本でした。
編集部による前書きが、その趣旨を述べているので、ここに引用しておきます。色は僕が付けたものです。出版社による本の紹介はこちら。
なお、TBをいただいたブログ「私たちは現日本政府の体制変革(レジームチェンジ)に反対します」の記事「共同声明への署名のお願い」にTBしました。
はじめに
いま、憲法九条を守ろうという運動が、日本中でひろがっています。加藤周一氏ら九名がよびかけた「九条の会」は全国で軽く六千を超え、日々勢いを増しています。
この運動には、平和をどう考えるかについて、さまざまな立場の人びとが参加しています。それらの人びとは、九条を守るということでは一致していますが、他の問題では必ずしも意見が同じわけではありません。日米安保条約をどう評価するかとか、国連がおこなう軍事活動をどう見るか等々、少なくない見解の相違が存在しています。
そのなかでも、自衛隊をめぐる問題は、とりわけ意見の違いが大きい分野です。九条への熱い想いは同じでも、自衛隊・軍隊を全否定する九条論もあれば、九条は自衛権と自衛隊を当然のこととして認めているという立場もあります。
それでも、九条を守ろうという運動がどんどんひろがっているのは、自衛隊についての立場の違いが脇に置かれているからです。この運動が、自衛隊を認めるかどうかという見地をお互いに押しつけあうことなく、九条改憲のねらいは自衛隊の海外派兵を恒常化することにあるのだと見抜き、「海外で戦争する国づくり」に反対することを共通の目標としてかかげているからです。
改憲にむけたキャンペーンが強まるなかでも、現在、各種の世論調査では、九条を堅持したいという人びとが多数です。同時に、「自衛隊のことを九条に書き込むのはどうか」と聞かれると、「その程度なら」と賛同する人びとが多いのも事実です。この運動の将来のためには、九条改憲の目的は、自衛隊を憲法上認知することにではなく、海外派兵の体制づくりにあるということが、より説得力をもって明らかにされていく必要があります。そして、九条を守ろうとする人びとに求められているのは、自衛隊に対する立場の違いを尊重し合うにとどまらず、お互いの立場をさらに深く理解することにより、さらに強固で、信頼にあふれた協力関係を築いていくことではないでしょうか。
本書に登場するのは、自衛隊を認知しているどころでなく、誰よりも国の行く末を想い、自衛隊とその隊員を愛しておられる三氏です。そうであるが故に、なんとしても九条を堅持したいと決意し、奮闘しておられる防衛省元幹部のみなさんです。自衛隊と九条をめぐる議論をさらに前へとすすめるうえで、キーパーソンともいえる人びとです。
読者のみなさんの知性と感性を刺激すること受け合いです。自衛隊を認めたら護憲ではなくなると考えている方々はびっくりすることでしょう。護憲の立場で頑張っている方々には、運動の幅をひろげる観点を提供するに違いありません。自衛隊を認めるから改憲は当然だという立場の方々に対しては、大きな衝撃を与えるかも知れません。迷っている方々には決断を促すはずです。さあ、挑戦してみてください。(編集部)
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