強制連行訴訟で、最高裁第2小法廷が「日中共同声明により、中国国民は裁判で賠償請求をできなくなった」と初判断―中川了滋裁判長、今井功裁判官、古田佑紀裁判官
1.本件での請求棄却という結論にも、
2.戦後補償裁判全般への最高裁の結論にも、
3.問題の司法的解決の放棄という最高裁の根本姿勢にも、
大いに反論したい気持ちです。しかし、今の僕にはそれだけの時間と能力がありません。ともかくしっかり考えなければなりません。各紙の記事と判決前のしんぶん赤旗の記事を引用しておきます。
強制連行訴訟、中国人元労働者らの請求棄却 最高裁(朝日電子版)
2007年04月27日12時08分
第2次大戦中に強制連行され、広島県内の水力発電所の建設現場で過酷な労働をさせられたとして中国人の元労働者ら5人が西松建設を相手に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が27日、あった。最高裁第二小法廷(中川了滋裁判長)は「72年の日中共同声明は個人の損害賠償等の請求権を含め、戦争の遂行中に生じたすべての請求権を放棄する旨を定めたものと解され、裁判上請求する権能を失った」と初めての判断を示し、原告側の請求を棄却した。
西松建設に計2750万円の支払いを命じ、原告側を逆転勝訴させた二審・広島高裁判決を覆した。原告敗訴が確定した。
一方、「被害者らの被った精神的、肉体的苦痛が極めて大きく、西松建設が強制労働に従事させて利益を受けていることにかんがみ、同社ら関係者が救済に向けた努力をすることが期待される」と異例の付言をした。
最高裁で強制連行をめぐる訴訟が実質審理され、判決が出るのは初めて。第二小法廷は、戦後補償問題は日中共同声明によって決着済みで、個人が裁判で賠償を求める権利はない、と司法救済上の「土台」を否定した。これにより、慰安婦訴訟などほかの20を超える継続中のすべての戦後補償裁判でも、中国人側の敗訴を決定づけた。
日中共同声明の「戦争賠償の放棄」に関する条項は、サンフランシスコ平和条約などと違って個人の賠償請求権までも放棄したかどうかが明記されていないため、その解釈が分かれてきた。
第二小法廷はまず、原告らが強制連行され、同社が過酷な労働をさせて安全配慮義務を怠る不法行為があったとする二審の認定を支持した。
そのうえで、請求権が放棄されたかどうかを検討。戦後処理の端緒となった51年のサンフランシスコ平和条約の枠組みについて、「個人分を含め、すべての請求権を相互に放棄した。ここでいう放棄とは、請求権を実体的に消滅させることまでを意味するものではなく、裁判上請求する権能を失わせるにとどまる」との解釈を示した。
これを踏まえて、日中共同声明について「戦争賠償や請求権の処理で、サ条約の枠組みと異なる取り決めが行われたと解することはできず、あえて個人の請求権処理を未定のままにせざるを得なかった事情はうかがわれない」と指摘。「同声明5項はすべての請求権を放棄する旨を定めたものと解される」と結論づけた。中川裁判長のほか、今井功裁判官、古田佑紀裁判官の計3人の一致の結論。
原告らは98年1月、広島地裁に提訴。44年ごろに日本に連行され、同県加計町(現・安芸太田町)の「安野発電所」を建設するため、1日12時間以上、導水トンネル工事などに従事させられたと訴えた。
強制連行訴訟:中国国民の請求権認めず 最高裁が初判断(毎日電子版)
戦時中に強制連行されて広島県の建設現場で重労働を強いられたとして、中国人男性2人と3遺族が、施工業者の西松建設(東京都港区)に計2750万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第2小法廷(中川了滋裁判長)は27日、原告勝訴の2審判決を破棄し、請求を棄却した。判決は「72年の日中共同声明により、中国国民は裁判で賠償請求をできなくなった」との初判断を示した。日本と平和条約を結んだ国の国民が、戦時中の日本側の行為を理由に訴訟で賠償を求めることは、事実上不可能になった。
一方で判決は、強制連行の事実と、作業現場での同社の安全配慮義務違反を認めた高裁判決の認定を最高裁として初めて是認した。そのうえで「被害者が被った精神的、肉体的苦痛は極めて大きい一方、西松建設は中国人の強制労働で相応の利益を得たうえ、戦後になって国から補償金を受け取っている」と指摘。「西松建設を含む関係者が被害救済に向けた努力をすることを期待する」と自主的な解決を促す異例の付言をした。
日本と旧連合国が調印した「サンフランシスコ平和条約」などの平和条約は、個人の請求権放棄を明記している。これに対し、共同声明は「中国政府は日本国に対する戦争賠償の請求を放棄する」とのあいまいな表現にとどまっているため、その解釈が争点となった。
原告側は「中国政府は個人の請求権を放棄していない」と主張した。これに対し、第2小法廷は「サンフランシスコ平和条約によっても個人の請求権が完全に消滅したわけではないが、裁判で賠償を請求することはできなくなった」と指摘。そのうえで、日中間の交渉経緯などを踏まえ「共同声明はサンフランシスコ平和条約と同様の平和条約で、中国国民は裁判で賠償請求できない」と結論付けた。
判決は3裁判官全員一致の意見。島田仁郎(にろう)・長官は慣例で審理に加わらず、津野修裁判官は弁護士時代に同社の顧問を務めていたため関与しなかった。
広島地裁は02年7月に請求を棄却したが、広島高裁は04年7月、高裁として中国人強制連行を巡る訴訟で初めて原告勝訴の判決を言い渡した。【木戸哲】
毎日新聞 2007年4月27日 11時43分 (最終更新時間 4月27日 12時01分)
2007年4月26日(木)「しんぶん赤旗」
中国人 戦争被害補償
請求権 どう判断
あす最高裁判決 企業側法解釈は誤り中国人の戦争被害者による日本政府への補償を求める権利をめぐって二十七日、最高裁判決があります。三月十六日、最高裁が論点を「請求権放棄」に絞って弁論を開きました。判決は強制連行や「従軍慰安婦」事件など、日本の侵略戦争で傷つけられた中国人すべての戦後補償裁判に影響を及ぼすことになります。(本吉真希)
訴訟は強制連行被害者と遺族計五人が原告となり、西松建設を相手に提訴したものです。広島地裁で敗訴しましたが高裁で逆転勝訴。判決は個人の請求権を認めました。
日本政府は一九五一年のサンフランシスコ平和条約、五二年の日華平和条約、七二年の日中共同声明で、日本に対する中国国民の損害賠償請求権は放棄されたと主張しています。西松建設も同じ論調です。
これに対し、中国人強制連行強制労働弁護団全国連絡会事務局長の森田太三弁護士は「根拠薄弱な主張」といいます。
国や企業側の法解釈の誤りを見ると―。
―中国は、連合国とその国民の賠償請求権の放棄を明記したサンフランシスコ平和条約の当事国ではない
―日華平和条約は台湾と結んだもので、中国は当事国ではなく、適用範囲は台湾と一部の地域に限られている
―日中共同声明では、「日台条約(日華平和条約)は不法であって破棄されるべきこと」(復交三原則)を確認している
―日中共同声明第五項は「日本国に対する戦争賠償の請求を放棄する」と宣言しているが、主語は「中華人民共和国政府」であり、「国民」ではない
九二年四月七日の参院内閣委員会では、加藤紘一官房長官(当時)は中国国民が訴える権利について「訴権は存在する」とのべていました。
なぜ、政府は法廷で「請求権放棄」論を主張しはじめたのか。森田弁護士は、次のように指摘します。
「戦後補償裁判は原告が長年敗訴してきました。しかし、二〇〇一年に強制連行事件の劉連仁訴訟が東京地裁で勝って以降、原告勝訴の判決が続くようになった。これに危機感をもった国や企業は〇二年ごろから、新たに『請求権放棄』論を主張するようになったのです」
最高裁の弁論の前日、中国外務省の報道官は定例記者会見で次のように発言しました。
「日中共同声明は両国政府が署名した厳粛な政治外交文書であり、戦後中日関係の回復と発展を形作る政治的基礎となったものである。どちらの一方も司法解釈も含めて(その)文書に及ぶ重要な原則と事項について一方的に解釈してはならない」(三月十五日)
中国政府は強制連行、「慰安婦」、遺棄毒ガスなどは未解決の問題として「人民の正当な利益を擁護する立場から、日本側に真剣な対応と善処を要求」しています。
二十七日、最高裁は中国人「慰安婦」事件第二次訴訟の判決も出します。国や企業側が主張する誤った法解釈について、どのような判断をするのか問われます。
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