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2006年11月 9日 (木)

映画「ALWAYS三丁目の夕日」

 素直に楽しめる映画でした。原作も暖かい人間関係を気持ちよく描いて読む者を癒してくれるような作品ですが、この映画もそういう風にできていたと思います。

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 西岸良平さんの原作は、1974年から小学館の「ビッグコミックオリジナル」に連載されているそうですが、今も続いているとは知りませんでした。僕がときどき読んでいたのは20代の頃だから1980年前後でしょうね。当時熱烈なファンもいましたが、僕はそれほどでもありませんでした。可もなく不可もなくという気持ちで読んでました。

 映画は、思っていたより楽しめました。原作を可もなく不可もなくという気持ちで読んでいたもので映画もそんな感じなんだろうと思って見始めましたが、それよりはもう少し楽しめました。思わず笑い出す場面もあったし、涙する場面もありました。

 また、原作者が言っている通り、短編の集まりである原作をどうやって2時間以上の映画にしているのかと思いましたが、うまくまとまりのある映画にしていたと思います。構成が成功しているのだと思います。

 欲を言えば、もっと人間を描いて欲しいとか深く描いて欲しいと言えるのですが、それは原作にもないものですし、原作自体そういう意図で描かれているものでもないと思います。つまり、当時の人間や社会を正確に描こうとして描かれているのではなく、当時の持っていたいい面を取り出してそれを元にファンタジーを作りたくて描かれていると思うので、そういうものとして読んで少しでも癒されればいいと思うのです。そう見れば、この映画も成功していると思います。

 一番感心したのは、VFXと言うそうですが、当時の風景を違和感なく再現できていたこと。僕は、この映画の舞台となっている昭和33年(1958年)には、2才で、瀬戸内海に面した地方都市に住んでいたので、当時の東京は知りませんから、本当の東京の風景だったのかどうかは正確には判断できませんが、それでも自分の記憶と照らし合わせて違和感がなかったです。汽車にしろ、都電にしろ、三輪車等の自動車、テレビ、扇風機、当時一戸一戸にあったごみ箱、街の風景等々です。

 これはすごいことだと思います。相当の手間と暇がかかるんじゃないかなあ。最近のテレビでやる戦争中を舞台にしたドラマを何度か見て、風景も人物もその台詞も強い違和感を感じるものばかりだったので、この作品ではどうなんだろうと少し疑念を持っていたのですが、これは見事でした。この映画の一番見事なところだと思います。当たり前のことではありますが、手間と暇のせいでもあるのでしょう、最近はこれができているドラマがまずないし、脚本の台詞のありえなさと相俟って、ここ数年のその手のドラマにほとんどリアリティを感じなかったのでなおさらすばらしいと思いました。

 話はわき道にそれますが、小津安二郎さんの初期の東急池上線か(今の)多摩川線あたりを舞台にした映画を見てて、1930年前後の東京と1960年代初めくらいまでの東京ってそれほど雰囲気が変わってない気がしました。人も風景も。それ以降東京を始めとする日本の風景は大いに変わったんだと思います。その変わる前の風景をこの映画は見事に再現できているんじゃないかと思いました。

 演技で印象に残ったのは、薬師丸ひろ子さん。役の雰囲気が一番出ていたような気がします。

 吉岡秀隆さんも、見る前に役に合ってないという感想も聞いていたのですが、結構頑張っていたと思いました。今までの彼の持つ雰囲気から半歩抜け出ていたんじゃないかなあ。欲を言えばさらにもう半歩抜けて欲しかったですが。でも、ともかくこの映画での吉岡さんの頑張りはちゃんと認めたい気がしました。

 堤真一さんは、「地下鉄(メトロ)に乗って」では今一つと思ったのですが、この映画ではもう少し頑張れてる印象でした。始めの方の鬼のように怒るシーンがうまいなあと思えました。

 さて、実はこの映画の俳優さんの中で、僕が一番注目し期待していたのは、実は堀北真希さんです。2年くらい前にドラマではない何かの番組でちらりとお顔を拝見して、あれっと思わせる魅力を感じていたものでそれ以後注目していました。何か独自のピュアな感じがあるんですよね。

 見た目の雰囲気はできていたのですが、演技はまだまだ頑張って欲しいなというのが僕の感想です。これからに期待したい。まだまだ期待して注目していたい女優さんです。

 オフィシャルホームページは、http://www.always3.jp/

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