若松節朗監督。西岡琢也脚本。角川歴彦製作総指揮。井上泰一製作。山崎豊子原作。
これはつまらない作品でした。
原作を読んでから見たのですが、原作とは全く違った見方・考え方で作られた作品だと感じました。原作と同じ登場人物で同じ事件が同じように描かれているのですが、その人間像や筋の中で果たす役割がかなり異なったものになっています。主人公を演じた渡辺謙さんは割と好きな役者さんですが、配役が間違っていると思います。
原作を読んだときには、文庫本の3巻で描かれている御巣鷹山事故とその被害者たちのことが本当に丁寧に描かれていて、僕は全5巻の中で最も感動しましたが、映画からはその迫力は全く伝わってきません。
主人公が会社から徹底的に抑圧される原因となった労働組合運動についても、昔は良かった懐かしい式の捉え方しかできてないと思います。1968年頃の全共闘活動をやった学生が、真摯な反省・考察もなく、情緒的で愚かな認識・理解を維持したまま昔を懐かしんでいる見方に通じるものがあると感じます。
こんな作品なら、題材とされた日本航空も何の抵抗感もなく受け入れられるでしょう。それほどにリアリティーのない作品です。原作を元にした映画であることは確かですが、原作が精力的で丹念な取材に基づいて作者自身が真実にぎりぎりまで迫って書かれているのに対し、この映画にはそのようなものはなく、視聴率によるコマーシャル獲得を至上の基準として作られているつまらぬテレビドラマと同じく、単に頭の中だけで作られた作り話に過ぎないと思います。
映画は無視して、原作のみを読むべきだと思います。前売り券を上げた友人には、チケットを破って捨ててもらいました。
なお、日本航空客室乗務員組合のたたかいを描いた井上文夫『時をつなぐ航跡』がお勧め(12月13日の記事)。
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